び…びっくりした。

何だろう。この人?

「な、何ですか…?」

「ちょっと…ちょっとこっちに来てくれないか?」

えっ?

柱から顔を覗かせるその男の人は、僕と同じ制服を着ていた。

ということは、この学校の男子生徒なのだ。

その人が、ちょいちょい、と手招きしてくる。

こ、怖いんだけど…何なんだろう。

よ、よく分からないけど…。何だか顔色が悪そうだし、困ってることがあるのかもしれない。

「ど、どうしたんですか…?」

そろそろと近寄ってみると、突然。

その男子生徒は、ガバっと柱の陰から出てきて、僕の両腕を捕まえた。

!?

「よっしゃあ!確保ーっ!!」

え、えぇっ!?

手招きされて近寄ったところを、あっさりと捕獲された。

「観念しろ!行くぞ!ついてこい!」

「えぇっ!?な、何なんですか?何なんですか!?」

僕の頭の中は、一瞬にしてパニック状態だった。

突然知らない人に捕獲されたら、そりゃそうなる。

「黙ってついてこい!」

そ、そんなこと言われても。

どうしよう。こんな時、加那芽兄様に教わった護身術を使うべきだろうか。

すると、僕の頭の中の加那芽兄様が、こんな時でも冷静に、僕にアドバイスをくれた。

いかなる時も落ち着いて、冷静に行動しなさい、と。

そ、そうですよね。加那芽兄様。

こんな時こそ、加那芽兄様の教えを実践する時。

下手に抵抗して、相手を余計興奮させたら逆効果だし。

僕は敢えて大人しくして、その男子生徒の言うことを聞くことにした。

黙ってついてこいと言われたから、黙ってついていくよ。

…怖いけどね。凄く。

もし危なそうな場所に連れていかれたら、すぐに大声をあげて逃げ出そう。