加那芽兄様は、とてもお優しい方だから。

僕がプレゼントを用意したと知って、僕を悲しませないよう、喜んでいるフリをしてくれているのかもしれない。

「ありがとう、小羽根。凄く嬉しいよ」

と言って、加那芽兄様はにっこりと微笑んでくれた。

「ど…どういたしまして…」

てっきり失望されると思っていたのに、予想外の反応をされて戸惑っていた。

「その…。もう、過ぎてしまいましたけど…。誕生日、おめでとうございます。加那芽兄様…」

この言葉は是非、日付が変わる前に言いたかった。

すると、加那芽兄様は。

「…」

無言で、また天を仰いでいた。

…えーと…?

「愛おしい…。あまりにも愛おしい…。脳細胞が焼き切れそうだ…」

また何か呟いてるし…。

「…とりあえず、これは家宝にしよう」

加那芽兄様は、僕の描いた下手くそな似顔絵を見つめながら言った。

…冗談ですよね?

「さぁ、小羽根。もう夜も遅い。ベッドで寝なさい」

「あ…は、はい…」

「おやすみ、小羽根。プレゼント、ありがとうね」

と言って、加那芽兄様は僕の頭をよしよし、と撫でてくれた。

その手の温かさに、やっぱりプレゼントを用意して良かった、と思った。







…ちなみに。

未だにその時の似顔絵が、金の額縁に入れられて客間に飾られている訳だが。

スミレの花束の方も、押し花にして、加那芽兄様の部屋に飾ってあるらしい。

押し花はさておき、似顔絵の方はさすがに恥ずかしいので、撤去して欲しいと心から思っている。

が、加那芽兄様には、全然その気はないらしい。