「…」

この反応は予想してなかった。

あ…あまりに呆れ過ぎて、天を仰いでいるのだろうか?

すると、加那芽兄様は。

「いじらしい…。なんていじらしい…。何なんだ、この可愛い生き物は…」

天を仰いだまま、何やらぶつぶつと呟いていた。

え…えーと…? 

「可愛過ぎる…。…天使か?ここにいるのは天使なのか…?」

「…あの…加那芽兄様…?」

「やっぱり天使なのか…!?」

「…あの、正気に戻ってください」

天使が何ですって?そんなものはいませんよ。

加那芽兄様、ご乱心。

「いや、大丈夫だ。ちょっと小羽根への愛おしさが爆発してしまってね」

「な…何を言ってるんですか…?」

さては加那芽兄様、パーティで疲れましたか?

あれだけのお客さんの相手をしてたら、疲れるのも無理もないけど…。

「そ、それより…その、それ…返してください」

それ、とは先程の似顔絵のことである。

そんな恥ずかしい似顔絵は…一刻も早く封印して、証拠隠滅しなくては。

しかし。

「どうして返さないといけないんだ?これは小羽根が、私の為に描いてくれたものなんだろう?だったら私がもらう権利がある」

「…!」

「こっちの、可愛らしい花束もね」

と言って、加那芽兄様は萎れたスミレの花束を手に取った。

そ、そんな。

「だ、駄目ですよ。そんな安っぽいプレゼント…」

「安っぽい?これの何が安っぽいんだ?心がこもっている、素敵なプレゼントじゃないか」

…!

「見てごらん、私に喜んでもらいたいという、小羽根の可愛くて健気で可愛い気持ちが、心から伝わってくる」

何で「可愛い」だけ2回言ったんですか?

そ、それより。

「でも…加那芽兄様、お客さんからあんなにたくさん…高級なプレゼントを…」

あんな立派なプレゼントをもらったのに、今更似顔絵と、雑草の花束なんてもらっても嬉しくないだろうに。

…それなのに。

「あんなつまらないプレゼントなんかより、小羽根の描いてくれた似顔絵の方が遥かに素敵だよ」

きっぱり。

そ、そんなこと言ったら…あのプレゼントを贈ってくれたお客さんが泣きますよ。

「彼らは、無悪家の代表代理である私に媚びを売る為に、貢ぎ物を献上したに過ぎない。私欲と打算にまみれた贈り物なんて、いくら高級だろうと希少価値があろうと、全く嬉しくない」

「…」

「それに比べて、小羽根のこのプレゼントはどうだ?ただ純粋に、私に喜んで欲しいという心からの祝福の気持ちを感じる。これを喜ばないはずがあろうか」

い…いつになく饒舌ですね、加那芽兄様…。

よく分かりませんけど…物凄く喜んでくれていると思って良いんです…よね?