し…しまった。

見られてしまった…。

僕は、慌ててそれらを抱き寄せるようにして隠した。

ばっちり見られてしまった後だから、今更隠してもしょうがないけど。

「な…何でもないです」

「あれ…スミレの花かい?何処から…。中庭で摘んできたの?」

バレてる。

「そ…そうですけど…。でも、そうじゃないんです…」

「…ふむ」

必死に隠そうとする僕に、加那芽兄様は少し思案顔。

そして。

「…小羽根、あそこにあるのは何?」

と言って、加那芽兄様は窓の外を指差した。

「え?」

釣られて僕は、窓の外をくるりと振り向いた。

…何も見えないけど。

しかし、これは加那芽兄様の罠だった。

まんまと釣られて視線を逸らした隙に、加那芽兄様は僕が隠そうとしていた画用紙を手に取り、するりと没収した。

「あっ…」

典型的な、「あ!UFO!」戦法に引っ掛かってしまった。

我ながら間抜け過ぎる。

しかし、7歳の子供にそんな戦法を仕掛ける加那芽兄様も、相当に意地が悪い。

「ごめんね、小羽根。こうでもしないと見せてくれないと思ったものだから…」

「か、返してください、それ…」

「…これ…」

加那芽兄様は画用紙を広げて、じっと眺めていた。

そこには、僕が描いた下手くそな似顔絵。

あまりに下手くそで、一見すると、誰の絵を描いているのか分からないだろうが。

しかし、加那芽兄様は僕より遥かに頭が良かった。

「これは…もしかして、似顔絵かな?」

「うっ…。…は、はい…」

見られてしまったからには、認めるしかなかった。

不注意にも、机の上に画用紙を放り出していた自分が悪い。

「その…。加那芽兄様の…誕生日プレゼントに…。似顔絵と…中庭で摘んできた花を…渡そうと思って、準備、してたんですけど…」

「…」

「控え室に…いっぱい、お客さんが持ってきてくれた、加那芽兄様宛てのプレゼントが…山積みになってるのを見て…」

「…」

「こんな安っぽいプレゼントは、加那芽兄様も欲しくないだろうって…」

最後の方は消え入りそうな声で、僕は自分の行いを自白した。

…物凄く恥ずかしかった。

加那芽兄様の目を見ることが出来なくて、視線は兄様の足元の方を向いていた。

「…それで…パーティを抜け出して、ここで泣いてたのかい?」

「な…。な、泣いてないです…」

「…」

加那芽兄様は無言だった。

…何で突然黙るんですか。

呆れているのだろうか。馬鹿なことをした僕の浅はかに。

恐る恐る、僕はそっと視線を上げた。

そこには、呆れた加那芽兄様の顔が…。

…あると、思っていたのに。

加那芽兄様は顔に手を当てて、天を仰いでいた。