「あ、あの…。ちょっとだけ…見ても良いですか?」

仰天した僕は、分を弁えずにそう尋ねた。

「あぁ、良いですよ。でも、汚さないでくださいね」

使用人も使用人で、忙しいのに僕に構ってなんか居られないとばかりに、ぞんざいに答えた。

それを良いことに、僕は加那芽兄様宛てのプレゼントを、そうっと覗いてみた。

その中身を見て、またしてもびっくり仰天。

ごてごてと宝石が散りばめられた腕時計や、洒落た金色のネクタイピン。

何十万円もするカタログギフトから、加那芽兄様と同じ年齢の高級ワイン。等々。

それはもう、目がくらくらするほどの「誕生日プレゼント」が、やって来たお客さんの数だけ、控え室に山のように積んであった。

…これ、本当に誕生日プレゼントですか?

貢ぎ物の類なのでは?

僕は目を丸くしていたけれど、控え室で山のようなプレゼントを整理している使用人達は、どんな高級なプレゼントを見ても平然としている。

僕はこの時初めて、加那芽兄様の誕生日パーティに参加したけれど。

使用人達にとっては毎年のことなので、驚くに値しなかったのである。

かく言う僕も、毎年加那芽兄様の誕生パーティに参加するようによって、ようやく慣れてきた。

しかし、初めて見た時は衝撃だった。

そのプレゼントのあまりの豪華さに圧倒され、それから、自分の用意した「誕生日プレゼント」のことを思い出した。

これらの立派な高級プレゼントに比べて、僕の用意したプレゼントと言ったら。

画用紙にクレヨンで描いた下手くそな絵と、中庭で摘んできたスミレの花。それだけ。

この控え室に積んである大量のプレゼントとは、比べ物にならない。

こんなつまらないものをプレゼントにしようとしていた自分が、途端に恥ずかしくなった。

…宝石のついた腕時計や、金ピカのアクセサリーを当たり前のようにもらったのに。

こんな似顔絵と雑草の花束なんて渡したって、喜んでもらえるはずがない。

自分がいかに浅はかで恥知らずだったか思い知った。

しかし、せめて、それらを渡す前に気づいて良かった。

自分の身の程というものを。

「…」

僕はパーティルームには戻らず、そのまま控室を出て、自分の部屋に戻った。

僕が退席したところで、誰かが気づくはずもなかった。