び、びっくりしたぁ。

いきなり手元を覗かないでください。

…って言うか。

「何それ。絵?もしかして後輩君が描いたの!?」

「ひぇっ…」

…み、見られちゃった。

恥ずかしっ…。

「あ、天方部長…!」

僕はガバッとスケッチブックに覆い被さって、咄嗟に絵を隠した。

「え?何で隠すんだよ?」

「れ、レポートは…?レポート書いてたんじゃなかったんですか…!?」

「おう、さっき終わった!ついにクライマックスファイナルラストスパートを決めて、ようやくな」

何ですか。クライマックスファイナルラストって。

意味は分からないけど、要するに終わったんですね?

そ、それならそうと言ってくださいよ。

「そ、そうですか…。終わって良かったですね…」

「おうよ!宿題真面目にやるなんて、我ながら超偉い」 

本当に偉い人は、宿題を2日前まで放置したりしませんけどね。

「…で、後輩君は何やってんの?」

うぐっ…。わ、忘れて欲しかったんですけど…?

「べ、別に…怪しいことは何も…」

「わー。見て、李優。上手だよー」

「おぉ…。本当だな」

…あろうことか。

久留衣先輩が僕のスケッチブックを手に、佐乱先輩と並んで眺めていた。

ちょ、いつの間にスッたんですか。僕、伏せて隠してましたよね?

「成程、これが小羽根さんの秘めた趣味という訳ですか」

「べ、別に秘めてませんから。あと、それ返してください!」

「恥ずかしがらなくても良いじゃないですか」

恥ずかしいですよ。当たり前じゃないですか。

あぁ…。こんなことなら、いくら暇だからって、先輩達の前でスケッチブックなんか開くんじゃなかった…。

「上手だね、小羽根君。小羽根君にこんな趣味があったなんて」

「絵が上手い奴って羨ましいよな。…しかし、この絵何処かで…」

「ちょ、眺めてないで返してくださいって」

そんなじっくり見ないでくださいよ。余計恥ずかしい。

「何で?良いじゃん。上手いんだし」

「う、上手くないですよ…」

自分でも恥ずかしくなるくらいなのに…。

こんな絵が上手だって言ったら、加那芽兄様の絵はどうなるんですか。天才画家じゃないですか。

「成程ねぇ。これが後輩君の趣味なのか…」

「趣味って言うか…まぁ、暇潰しのようなものですけど…。これでも元々は、美術部に入ろうかと考えてましたからね…」

「え、そうなの?」

そうなの?じゃないですよ。

あなたに拉致されて、部活動説明会に参加出来なかったんですよ。お忘れですか。