「あ、終わった…」

ほんの20分ほどで、読みかけだった本が終わってしまった。

面白くて、つい夢中で読んでしまった。

困ったな…。読む本がなくなってしまった。

…一方の、先輩達の様子は。

「ふー。ようやく終わりましたよ」

弦木先輩は終わったみたい。だけど…。

「うぉぉぉ!ファイナルラストスパートーっ!」

などと叫びながら、未だにシャーペンを動かし続けている天方部長。

…ファイナルラストスパートって何ですか?

どうやら、天方部長はまだまだ終わる気配がなさそうだ。

それで、久留衣先輩と佐乱先輩の方は…。

「手前の紐を引っ張って…。李優、次は?」

「奥の紐を小指で引っ掛けて…」

「えぇと…こう?」

「違う、それ親指。お前、小指と親指の区別もつかないのかよ…」

「えへへー」

…笑って誤魔化していらっしゃる。

仲良さそうで何より。

どうやら、こちらもまだまだ終わりそうにない。

どうしようかな…。暇だな、僕…。

何か暇潰しの道具を持ってないだろうかと、自分の鞄の中を探っていると。

「…あ」

そこに、スケッチブックを見つけた。

スケッチブックには、描きかけの『ルティス帝国英雄伝』の絵があった。

…やることないし、この絵の続きでも描こうかな?

先輩達の前で、こんな下手くそな絵を出すのは恥ずかしい…。

…けど。

「…」

先輩達は、それぞれ自分のやるべきことに夢中になっているようだし。

こちらに注意を向けている余裕はなさそうだ。

じゃあ、こっそり絵の続きを描こうかな。

他にやることもないし…。

僕はスケッチブックを取り出して開き、絵の続きを描き始めた。





…そんな風にして、最初の30分ほどは、一人で集中して絵を描いていられたのだが…。



「…ねぇ、後輩君何やってんの?」

突然天方部長に話しかけられて、心臓が跳ね上がるかと思った。