…さて、そんなことがあった翌日。

放課後に、調理実習室に行ってみると。




「うぉぉぉ!ラストスパートーっ!」

「まだ4ページ目じゃないですか。ラストスパートと言うには早いのでは?」

「気分的な問題だよ!ラストスパートだと思ったら頑張れるだろ!」

「余計に力尽きません?」

…先輩達は相変わらずですか。

昨日のうちに終わらせて、今日は通常通り部活を出来るかと思ったんだけど。

そんなことはありませんでした。

すると、久留衣先輩が僕の腕をちょいちょい、とつついた。

「萌音はねー、昨日終わったんだよ」

「あ、そうなんですか…」

久留衣先輩はもう終わったんですね。

まぁ、彼女特権で、佐乱先輩が付きっきりで手伝ってあげてましたもんね。

「終わってないのは、そこのアホ二人だけだ」

佐乱先輩は呆れた顔で、弦木先輩と天方部長を指差した。

「天方部長は分かりますけど…弦木先輩もですか…」

「おい後輩君。『部長は分かりますけど』ってどういう意味だよ?」

あ、済みません…。また本音が…。

「大丈夫ですよ、小羽根さん。俺はもう少しですから。あと5、6行くらいで終ります」

とのこと。

じゃあ、実質残ってるのは天方部長だけですね。

多分、今日中には終わると思うけど…。

「…今日も部活は無しですか?」

「そうなるだろうな。…好きなことしてて良いぞ」

はい、分かりました。

それじゃ…また本を読んで過ごそうかな…。

「ねぇねぇ、李優。一緒にあやとりしよー」

久留衣先輩が、そう言って佐乱先輩を誘っていた。

あ、あやとりって…。

「お前なぁ…。高校生にもなって…」

「ねぇねぇ」

「…分かったよ」

彼女のおねだりに弱い佐乱先輩であった。

ペンケースの中からあやとり用の紐を取り出して、本当に二人あやとりを始めてしまった。

「さて、何をやる?」

「んー。吊り橋かな」

「はいはい」

黙々と、二人あやとりに取り組む二人の先輩を横目に。

僕は、昨日と同じように読書を始めた。

…の、だが。