「あのー…。先輩方…。部活動の方は…?」

何とか気づいてもらおうと、片手を上げて質問したのだけど。

「うげっ!また資料が出てきた!何個あるんだよ畜生」

「AからEまであるので、5つですね」

「多っ!一個で良いじゃんそんなの。つーか資料まるごと消えてくれ!」

「それじゃレポート課題の意味がねーだろ。非生産的な愚痴ばっか言ってないで、黙って真面目にやれ」

「李優君が辛辣!」

あのー。僕の質問はスルーですか?

駄目だ…。全然相手にして貰えそうにない…。

…。

こうなったら覗き見してやろうと、僕は先輩方の背後から忍び寄り。

そーっと、テーブルの上を盗み見た。

すると。

どうやら、資料の束を見ながらそれをまとめ、レポート用紙に何やら書き込んでいるようだ。

研究課題?レポート課題の類だろうか。

…料理研究部として、料理の研究をしているんだろうか。

…と、思ったが。

「第一、テーマがつまんないよなー。これ」

「確かに。もっと面白いテーマだったら、やる気が出るんですけどね」

「テーマが何だろうと、お前ら真面目に宿題やらねーじゃん」

「確かに」

佐乱先輩の一喝に、天方部長は真面目な顔で頷いた。

…否定しないんですか。宿題は真面目にやりましょうよ。

と言うか、宿題ってことは…。

「…つかぬことを聞きますけど、天方部長、そのレポート課題のテーマって…?」

「あぁ、これ?『人類と生態系の歴史』っていう、生物の授業で出されたレポート課題」

全然料理研究部に関係ないテーマ。

って言うか、この質問は普通に答えてくれるんですね。

さっきまでスルーされ続けてたんですが、あれってもしかしてわざと…?

僕、先輩方に何かしました?

それから、何より聞きたいことがまだ残っている。

「…何で部活動の時間なのに、宿題なんかやってるんですか?」

全然関係ないですよね?生物の授業のレポート…。

「仕方ないだろ。提出期限が明後日だから、そろそろやらなきゃいけねーんだよ」

「は、はぁ…」

キッ、と天方部長に睨まれた。

な、何で睨むんですか?

「良いか、こっちだってやりたくてやってんじゃないんだ。今回のレポートを出さなかったら一学期の単位は出さないって脅されたから、仕方なく。仕方なくやってんだよ。分かったか?」

「す、済みません…」

何故か天方部長に怒られて、僕は慌てて恐縮しながら謝罪した。

…何で僕が謝ってるんですか?

提出期限ギリギリまで課題を後回しにしていた、自分が悪いのでは…?

「…済まんな。気を悪くしないでくれよ、小羽根」

佐乱先輩が、理不尽に怒られて呆然としている僕にそう言ってくれた。