…と、いうやり取りをして、その日のお茶会は終わった。

僕が興味を示したものだから、加那芽兄様はさっきの画集を快く貸してくれて、部屋に持って帰っても良いよ、と言ってくれた。

加那芽兄様のお土産なのに。申し訳ない。

お言葉に甘えて、僕はその画集を貸してもらって、自分の部屋に持って帰って眺めた。

さすが、『ルティス帝国英雄伝』の絵画以外でも、素敵な作品がいっぱいありますね。

画集を見ていると楽しくなってきて、加那芽兄様の書庫から別の画集を借りてきて、つい夜更かししてしまった。

そして、加那芽兄様が帰ってきた翌日。

それらの素晴らしい絵画作品に触発されたか、それとも加那芽兄様の大袈裟な褒め言葉に気を良くしたか。

あるいは、単に気が向いただけかもしれないけど。

僕は、久し振りに絵を描いてみることにした。

と言っても、加那芽兄様の得意な油絵じゃなくて、スケッチブックに描くただのデッサンなんだけど。

折角だから、僕も『ルティス帝国英雄伝』のワンシーンを描いてみようかなと思って。

お気に入りのシーン、主人公と親友の友情を確かめ合うあのシーンをね。

頑張って描いてはいるけど、しばらく描いてないうちに、また自分が下手になってて悲しくなった。

ついでに言うと、画集で素晴らしい絵画ばかり見ていたものだから、そのあまりの落差に、これまた悲しくなった。

やっぱり描くのやめようかなと思ったけど、加那芽兄様が僕の絵を見たがってたから、一応投げ出さずに完成させようと思う。





…そして、料理研究部の「次」のきっかけは、そんな僕の絵画から始まった。