加那芽兄様は、大層しつこく聞いてきたけれど。

残念ながら僕は、幽霊部員となっている先輩部員達の名前までは知らない。

素直にそう答えると、「それじゃ、電話で話してくれた先輩の名前の綴りは?」と真剣な顔で聞いてきて。

綴りまで聞いてどうするんだと思いながら、仕方なく先輩達の名前の綴りを教えたけど…。

加那芽兄様は、その名前をメモ帳に書き記していた。

「成程…。天方まほろ、佐乱李優、弦木唱…。…はて、弦木…唱か…」

「…何か気になることでも?」

「いや、何でもないよ」

そうですか。

「それより気になるのは、この…久留衣萌音という人物だ」

と、加那芽兄様は真剣そのものの表情で言った。

…?

「久留衣先輩が何か…?」

「女性なんだろう?この先輩は」

「そうですけど…?」

「…成程。それは警戒対象だ。小羽根に近寄らんとする異性は一人残らず排除、」

「久留衣先輩は、佐乱先輩と付き合ってるそうですよ」

「…と思ったけど、やっぱり異性との交友も最低限は必要だよね」

この変わり身の速さよ。

「よし、分かった。私は心から君を応援するよ、小羽根。存分に学生生活を楽しむと良い」

「はい、ありがとうございます。加那芽兄様」

加那芽兄様直々のお許しもいただいたことだし。

兄様に言われた通り、学生生活を楽しむことにします。