海外の、超高級ブランドの財布だった。

一般人だったら、手にするどころかお目にかかるのも難しいほどの。

う…嘘でしょう?

保証書もついてるし…。イミテーションという訳ではあるまい。

加那芽兄様が、わざわざイミテーションを買ってくるはずがないし。

「ど…どうしたんですか?これ…」

思わず、自分の声が上擦ってしまった。

当たり前ですよ。

こんな高級財布、僕が触っちゃって良いんですか?

し、指紋がついてしまう。

「加那芽兄様のお土産と間違えてませんか…?」

加那芽兄様が持つなら分かりますけど。

何でこんな高級品を、僕に…?

「間違えてないよ。それは小羽根の為に買ってきたものだからね」

と、微笑んで言う加那芽兄様。

「こんな高いもの、いくら加那芽兄様からのプレゼントでも、受け取れませんよ」

「気にしなくて良い」

気にしますよ。

「少し遅くなってしまったけど、高校の入学祝いにと思ってね」

入学祝い。そういうことだったのか。

こんな立派な入学祝いをプレゼントしてもらえる高校生が、全国にどれくらいいるんでしょうね。

勿体無いなぁ…。

「そんな…気を遣わなくても良かったのに…」

「気を遣うなんてとんでもない。私がそうしたいからしているだけだよ」

…とは、言いますけども。

加那芽兄様が僕に、このような超高額なプレゼントをくれることは、これが初めてではない。

去年の僕の誕生日は、「15歳の節目の年だから」とか言って、外国製ブランドの腕時計をプレゼントしてくれたし。

「中学の卒業祝い」とか言って、これまたブランドモノのバッグをくれたし。

何ならもっと前、「中学の入学祝い」や、「小学校の卒業祝い」で、これまた高価なプレゼントをいくつも。

毎年の誕生日だって、それなりにお金のかかるお祝いをしてくれている。

キリがありませんよ。

「加那芽兄様…。嬉しいですけど、もう少しお金の使い方を考えましょう」

「まさか。可愛い弟の為に投資するんだから、いくら払ったって安いものだよ」

お金持ち故の余裕ですね。

こんな高価な財布、逆に使いづらいから安物で充分です…と言いたいところだけど。

折角加那芽兄様がプレゼントしてくれたのに、使わないのも失礼ですよね…。

…分かりました。有り難く受け取っておきます。

「えぇと…ありがとうございます、兄様…」

「どういたしまして」

と、加那芽兄様は満足げに微笑んだ。