更に、衝撃を受けたのはそれだけではない。

「うんまい棒とティロルチョコは分かるとして…。何でふ菓子なんですか?」

弦木先輩、尋ねるところはそこなんですか?

「え?定期的に、衝動的に食べたくなるだろ?」

…なります?ふ菓子。

小学校低学年で卒業しましたよ。僕は。

「うんまい棒は…これ、何味?」

久留衣先輩も。尋ねるところはそこですか。

「色々あるぞ。コンポタ、サラミ、明太子、ヨーグルト、てりやきチキン、サルミアッキ…」

サルミアッキ…!?

「成程ー。美味しそうだね」

美味しそうなんですか?サルミアッキですよ?

「随分安上がりにまとめたな…」

「まぁそう言うなって。ついでに自販機でジュース買ってきたから。はい、どーぞ」

天方部長は、各々部員達に紙パックのジュースを配った。

「ほいっ、後輩君」

「あ、ありがとうございます…?」

部長はオレンジジュース、佐乱先輩はりんごジュース、弦木先輩はいちごミルクで、久留衣先輩はコーヒー牛乳。

そして、何故か僕のだけ無添加トマトジュースなんですけど、これは何かの嫌がらせなんですか?

いや、そんなことより…。

…スイーツビュッフェなのに、何故駄菓子?

自作の…自作の洋菓子を持ち寄るんじゃないんですか?

先輩達は、僕が頭の中パニックになっていることにも気づかず。

次に、久留衣先輩が鞄の中から「スイーツ」を取り出した。

「萌音はねー、これだよ」

見覚えのある、横長の紙の箱。

あ、あれって、もしかして…。

「おっ。ミセスドーナツのドーナツか?」

「うん。期間限定のチョコドーナツを三種類。パン・デ・チョコと、イタリアンクルーラーと、ニューファッション」

やっぱり。大手ドーナツショップのドーナツを三種類。

えっ…。

「おぉ。美味そうじゃん!」

「今朝学校に来る前にミセドに寄って、買ってきたんだー」

とのこと。

か…買ってきた、って…。

「それじゃ、次は俺が」

次に、弦木先輩が持ってきたスイーツ。

今度こそ手作りのお菓子が出てくるか、と思ったが。

そんなことはなく。

「見てください。昨日、苦労して買ってきたんですよ」

「わー、凄い。真っ黒だー」

「何なんだ?これ」

弦木先輩が鞄から出したのは、真っ黒なビニール袋に入った、真っ黒な包み。

その包を開けると、これまた黒い容器に入れられた、真っ黒な…。

「みたらし団子です」

えっ。これがみたらし団子?

僕は、恐る恐るトレーの中を見つめた。

真っ黒な団子に、真っ黒なソースがたっぷりとかかっている。

何なら、団子の串まで黒い。

僕の知ってるみたらし団子と違う。

お団子って言ったら、普通は白くて、茶色っぽいみたらしソースがかかってて…。

それなのに、このみたらし団子は、全てが真っ黒だった。

な、何なんだろう。この暗黒のお団子。

焦げてる?焦げてるの?

でも、焦げ臭い匂いは全然…。

「ふふふ。皆さん驚きましたね。これは『ブラック・カフェ』でテイクアウトした、ブラックみたらし団子なんです」

弦木先輩が、自信満々にそう言った。