しかし、加那芽兄様の目に入る前に、翌日先輩達の口に入ることになるのだ。

恥ずかしがってる場合じゃないですよ。

他の先輩達は何を作ってるんだろうなぁ…。佐乱先輩とか、きっと立派なお菓子を作ったんだろうなぁ…。

僕のカチカチクッキーと、味無しカップケーキが恥ずかしい…。

などと考えながら、迎えた放課後。

恐る恐る、作ったお菓子を持って調理実習室に向かうと。





「よーし、皆揃ったな!そんじゃあ早速、いつものアレをやるぞ!」

と、音頭を取る天方部長。

いつものアレ…って。

「美味しいお菓子を食べたいかーっ!?」

「おー!」

あっ…それですか…。

…要ります?それ。

「スイーツビュッフェに行きたいかーっ!?」

「おー!」

「お、おー…」

「声ちっさいぞ後輩君!」

小っ恥ずかしいんですよ。察してください。

すると、冷めた目で天方部長を見つめていた佐乱先輩が。

「アホなことやってないで、早く自分の持ってきた菓子を出せよ」

物凄く冷静に、そう言ってくれた。

ありがとうございます。

「何だよ、全くノリ悪いなぁ…。…まぁ良いか。じゃあ早速…自分の持ってきた、自慢のスイーツを紹介しよう!」

ドキドキ。

天方部長はどんなスイーツを作ってきたんだろう…?

真っ先に、天方部長が見せてくれたのは。

「ほいっ、これ。昨日駄菓子屋行って買ってきたんだよねー」

そう言って、調理台の上に置いたのは。

白い小さなビニール袋いっぱいの…。

…うんまい棒。

皆さんご存知、色んな味の種類がある美味しい棒状のスナック菓子である。

…え?

「それから、これ」

次に出してきたのは、これまた小さいビニール袋いっぱいの…。 

…ティロルチョコ。

皆さんご存知、小さな正方形のチョコレートである。

…えっ?

「最後に、これ!」

最後にテーブルの上に出したのは、こちらも小さなビニール袋いっぱいの…。

…ふ菓子。

皆さんご存知、古き良き懐かしき駄菓子である。

…えぇっ?

その時の僕は、随分間抜けな顔でポカーンとしていたと思う。