これでも僕は、昔から甘いものが好きである。

ケーキでもクッキーでもチョコレートでも、甘いお菓子なら何でも好きだけど。

一番好きなのは、そういうお菓子を加那芽兄様と一緒に食べることだ。

加那芽兄様が屋敷にいる時は、よく、一緒に中庭でティータイムを楽しんだものだ。

加那芽兄様は僕が甘いものを好きだと知っているから、出張に行く度に、美味しいお菓子をお土産に買ってきてくれた。

そういう、全国各地の美味しいお菓子を、紅茶と共に、加那芽兄様と向かい合って、出張の思い出話を聞きながら食べること。

これが一番好きだった。

幼い頃から、加那芽兄様が買ってきてくれた、全国各地の様々なお菓子を食べた経験から。

これでも、甘いものに関しては、それなりに造詣が深いつもりである。

だから、普通の料理を作るのは下手くそでも。

せめて、昔から加那芽兄様が何度も食べさせてくれた、甘いものに関してだけは。

初めてでも、少しくらいは上手に作れるんじゃないかな、と…。

…そう、思っていたのだけど。







スイーツビュッフェの前日。日曜日。

その日、僕は屋敷の料理人に無理を言って、朝から厨房を貸してもらうことにした。

「…よし」

無人の厨房で、僕はエプロンを身に着けて、昨日のうちに用意した材料をテーブルの上に置き。

加那芽兄様の書庫で書き写したレシピのノートを、その横に広げた。

じゃあ、そろそろ始めるとしよう。