何で黙るんですか。佐乱先輩。

「お願い、李優」

「あー…。うん…。…そうだな…」

ちょ、佐乱先輩。さっきまで反対の雰囲気だったじゃないですか。

何で流されてるんですか。

「ほらぁ。可愛い彼女に頼まれちゃ、断れないよなぁ?」

にやにや、と人の悪い笑みを浮かべながら、天方部長が佐乱先輩を肘でつついた。

え。彼女…。

「李優さんと萌音さん、付き合ってるんですよ」

事情が掴めない僕に、弦木先輩がそう教えてくれた。

あ、そうだったんですか…。

「だから、萌音さんの『おねだり』には弱いんです。李優さんの唯一の弱点ですね」

「成程…」

それで、あっさりと絆されてしまってるんですね。

他ならぬ、恋人である久留衣先輩のおねだりだから。

「あー、もう…。分かったよ。作ってくれば良いんだろ?」

「わーい。ありがとう李優。大好き」

ぎゅう、と佐乱先輩の手を握る久留衣先輩。

成程。あの仕草にノックアウトされたんですね。

「よし、じゃあ、決まりだな」

してやったり、と天方部長は口元に笑みを浮かべ。

「スイーツビュッフェは来週の月曜日に開催する。各人、3種類ずつスイーツを用意してくるように!」

部長権限とばかりに、高らかにスイーツビュッフェの開催を宣言。

…あぁ…勝手に決められてしまった…。

こうなったからには、最早逃げられなかった。

何としても、来週の月曜日までに、スイーツを用意しなければならない。