…スイーツビュッフェって、甘いもの限定のビュッフェってことですよね?

あれって…学校で開催出来るんですか?

「どうしたんですか。いきなり…」

弦木先輩が、僕の抱いた疑問を代弁するように言った。

「いや、この間イタリア料理作った時さ、ティラミスめっちゃ美味かったじゃん?」

そうですか。

それは…その節はどうも。ありがとうございました。

「あの美味しいティラミスが忘れられなくてさぁ。口の中が砂糖を求めてるんだよ」

「…角砂糖でも舐めたらどうですか?」

「ってな訳で、手っ取り早くスイーツビュッフェを開催しようと思ったんだよね」

成程。とても安直ですね。

…やっぱり、角砂糖を舐めれば良いのでは?

「料理研究部たる者、甘いものを極めるのも悪くない!だろ?」

そんな、自信満々に同意を求められても…。

「萌音は賛成だよ」

真っ先に、久留衣先輩が賛成した。

甘いもの好きなんですよね。久留衣先輩…。

「李優のお菓子食べたい。李優の作ったお菓子ってね、凄く美味しいんだよ。パティシエさんなの」

「…そうなんですか…」

まぁ、佐乱先輩はこの料理研究部で、唯一まともに料理が出来る部員ですからね。

何でも、美味しいものを作ってくれそうである。

問題は他の三人の先輩だ。

天方部長、言い出しっぺなのは良いけど、ちゃんとお菓子を作れるんだろうか…?

…甚だ疑問。

「…どうした、後輩君。なんか言いたそうな顔だな?」

「えっ?いや、そ、そんなことは…」

先輩方の料理の腕を疑ってました、とは言えず。

「え、えぇと…。それで…スイーツビュッフェってどうやって行うんですか…?」

質問をすることで、何とか誤魔化した。

「そうだなー。じゃあ、各人でお菓子をそれぞれ3種類ずつ用意してくる、ってことでどう?」

えっ。3種類ずつ?

意外とハードルが高くてびっくりした。

「お前…。それは無茶振りだろ」

この中で唯一料理の腕前がまともで、そして唯一良識のある佐乱先輩が、顔をしかめたが。

しかし、佐乱先輩には致命的な弱点があることを、僕はこの時初めて知る。

「あのね、萌音ね、李優の作ったお菓子食べたい」

「…」

天方部長には強く出る佐乱先輩であるが、久留衣先輩のおねだりに、何故か黙り込んでしまった。