やっぱ駄目かー、じゃないですよ部長。

分かってて食べさせたんですか?

チーズと黒胡椒の味で、何とか誤魔化そうと頑張っている…その努力は感じる。

しかし、この、砂抜きしていないアサリの、ジョリジョリとした食感。

それから、生臭い魚の切り身が米に染み付いて、何とも言えない不味さのハーモニーを作り出している。

…口の中がとっても生臭い。

これは…さすがに…。表現するのが難しいけど…。

…一口食べたら、もうこれ以上食べなくないな。って感じの味だった。

「まっず。何だこれ」

「何だろう。魚の卸市場をまるごと鍋に入れて煮たみたいな味がしますね」

佐乱先輩と弦木先輩も、この反応。

「だから素直にアクアパッツァにしておけば…」

「だってよ。だってよー!シーフード入りのリゾットって、なんか美味しそうじゃね?」

などと、天方部長は供述しており。

シーフードリゾットは美味しいと思いますよ。…ちゃんと下拵えした材料で、レシピ通りに作ったら、の話ですけどね。

「お前が作ったんだから、これはお前が責任持てよ」

「ひっど!皆で作ったんだから皆で食べようぜ!」

悪いけど、僕はもう結構です。

しばらくシーフードとリゾットの顔は見たくない。

それより、自分の作ったティラミスを食べさせてください。

「もぐもぐ。ティラミス美味しいね」

現状、久留衣先輩が一人でぱくぱくティラミスを頬張っていらっしゃる。

甘いもの好きなんですか?

「美味しい…ですか?ティラミス…」

「うん。小羽根君もお菓子作るの上手なんだね」

「いえ…そんなことは…」

僕はあくまで、レシピ通り作っただけなので…。

…まぁ、ハナからレシピを無視する先輩達よりは、料理上手だと自負していますが。

あなた方は、本当に料理研究部なんですか?

「おっ、ほんとだ。ティラミスうめー」

「小羽根さん、もしかして料理が趣味なんですか?」

「本当だ。こいつら三人の料理の後で食べたら、天国みたいな味がするな」

天方部長、弦木先輩、佐乱先輩の三人も、僕の作ったティラミスを食べながら、褒めてくれた。

あ、ありがとうございます。

試しにと、僕も自分で自分の作ったティラミスを食べてみる。

お…おぉ。本当…。

「な?美味いだろ?」

「…はい。先輩達の料理よりは美味しいですね」

「後輩君がなかなか痛烈!」

あ、済みません。つい本音が…。

そりゃあ、ケーキ屋さんのティラミスには遥かに劣るけれど。

初めて作ったにしては…少なくとも、ハチャメチャ料理ばかりを作る先輩方に比べたら…。…とても美味しい。

やれば出来るじゃないか…。…良かった。