…さて、それはそれ。

創立記念祭を終えて、無悪家のお屋敷に帰った後。

加那芽兄様が、にこにこと嬉しそうに迎えてくれた。

「あ、小羽根お帰り。待ってたよー。今日はお疲れ様、疲れた小羽根の為にお菓子とお茶の用意を、」

「加那芽兄様。今後一切、お仕事以外でSNSの使用を禁止します」

「え、何で…!?」

…何でじゃないですよ。

あなたは、もう少し御自分の影響力というのを自覚してください。

僕は加那芽兄様に、あの後の『メルヘン・クレープ』の異常な盛況ぶりを説明した。

案の定、加那芽兄様は少しも驚くことなく、にこにこと聞いていた。

ほら。やっぱり。

「加那芽兄様…あなた、分かってて御自分のSNSに投稿したでしょう」

「お客さんが来ないって、小羽根達が寂しがってるように見えたから…」

だからって、目が回るほどたくさんのお客さんに来て欲しい、とは言ってませんよ。

お陰でとっても疲れました。

有り難いですけど。有り難いことなんですけど。

でも、限度ってものがありますから。

「もう…加那芽兄様は…」

「分かった分かった。今後は気をつけるよ。それで良いでしょう?」

良いでしょう?じゃないですよ。

丸め込もうとしないでください。

「ほらほら。一緒にお茶しようじゃないか。小羽根の為にとびっきりのお茶菓子を用意してあるからね」

「…本当に気をつけてくれます?」

「勿論だよ。可愛い小羽根のお願いだからね」

にこっ。

…果たしてその笑顔、信じて良いのやら。

…まったくもう。

「それを約束してくれるなら…お茶でも何でも付き合ってあげますよ」

「ありがとう。小羽根は良い子だね」

よしよし、と頭を撫でられた。

加那芽兄様ったら…調子良いんですから。

そして、そんな加那芽兄様に毎回流されてしまう僕も、我ながら甘いですね。














END