さて、そんな調子で、調理開始からおよそ二時間後。

調理台の上に、完成した料理が並べられた。

ピザ、カルボナーラ(本当はペペロンチーノの予定だったけど、レシピを間違えてカルボナーラになってしまった)、リゾットと、デザートにティラミス。

それから、佐乱先輩が手早く作ったイタリアンドレッシングをかけたサラダ。

…何だか炭水化物ばかりですね。

本来は、ここにメイン料理として、アクアパッツァが加わる予定だったんですけど。

アクアパッツァの材料を、天方部長が勝手にリゾットに使ってしまったので、品数が減ってしまった。

「おー!すげぇ、美味そうじゃーん!」

「やれば出来るものですね」

「早く食べよー」

天方先輩、弦木先輩、久留衣先輩の順で、調理台に並べられた料理を嬉しそうに見下ろしていた。

…一方、佐乱先輩は。

「…大丈夫ですか?佐乱先輩…」

「はぁ…はぁ…。疲れた…」

…そうでしょうね。

これらの料理、全部佐乱先輩が作ったようなものですから。

よくもあの壊滅的な状態から、何とかここまでリカバリーしたものだ。

佐乱先輩のリカバリー力、凄くないですか?

「お疲れ様です、佐乱先輩…」

「あぁ。ありがとうな…。…今回はまだマシだぞ。小羽根が一品作ってくれたからな」

そ、そうですか。

僕が作ったのは、デザートティラミス一品だけだったんだけど…。

それだけでも、ここまで感謝されるのだから。

普段佐乱先輩がどれだけ一人で頑張ってきたのか、その苦労が窺い知れるというものだ。

「よーし、食べよ食べよ」

と言って、天方部長はスプーンとフォークを手に取った。

早速、いざ実食ですか。

先輩達はその前に、反省会を開いた方が良いのでは…?

内心そう思ったが、部長は全く反省する様子もなく、完成した料理に齧り付いた。

「うん、美味い!」

「本当だ。なかなかイケますね」

…部長も弦木先輩も、普通に食べていらっしゃる。

しかも、美味しいらしいですよ。

あの壊滅的な調理過程を経て、よく美味しい料理が完成しましたね。

全て、佐乱先輩の功績です。

「もぐもぐ、ティラミス美味しいね」

「あっ…はい…」

久留衣先輩は、真っ先にデザートのティラミスにぱくついていた。

最初にデザートなんですか?久留衣先輩…。

「でも、やっぱり李優が作ったデザートの方が美味しいなー」

「そ、そうですか…」

「おい、萌音。ペペロンチーノのつもりでカルボナーラを作ったお前が、後輩に文句つける資格はない」

すかさず、佐乱先輩に怒られていた。

良いんですよ、気にしないでください。

先輩方ほど壊滅的ではありませんけど、僕も佐乱先輩に比べたら、全然、ド素人ですから。