ネコ耳カチューシャと、ピンクエプロンを外して。

僕は周辺の屋台を巡って、先輩達と、自分の分のお昼ご飯を買いに行くことにした。

色々な屋台が並んでいるけど…さすがに、何処も閑散としていますね。

どれもこれも、中庭で生徒会が、格安パフェを販売しているからでしょう。

悲しくもお客さんを奪われた屋台の皆さんは、暇そうに営業していた。

そろそろお昼が近づいてきたのに、これとは…。

来年からは、屋台のメニューをもう少し考えないといけませんね。

さて。それはそれとして。

先輩達のお使いを果たさないと。

えぇと、まほろ部長はホルモン焼きそば…に、パシリにされた腹いせの激辛ソースをトッピングして…。

フライドポテトと、唐揚げと…。

次々に屋台を巡るが、どの屋台もほとんどお客さんがいないお陰で、並ぶことなくすぐに購入出来る。

僕らの惨めな『メルヘン・クレープ』と違って、他の屋台は、それでもちらほらとお客さんが来ているのが羨ましい。

特に、フライドポテトの屋台や、ポップコーンの屋台は、3、4人のお客さんが群がっていた。

パフェで甘いもの食べたら、今度はしょっぱいものが食べたくなりますもんね。分かります。

逆に、甘いものの屋台…。僕達のようなクレープや、ワッフル、ドーナツなどを売る屋台は。

僕らと同じように、まったくお客さんが来ていなくて、物凄く暇そうだった。

店番も、僅か一人、二人しかいない。

その目は、既に死んでるようにも見えた。

「あー、やることないなー」みたいな顔。

「どうせこの後も客、来ないんだろ?」と諦めた顔である。

…うーん。生徒会の罪は重い。

来年は、生徒会の屋台のメニューをよく確認して、くれぐれも被らないように気をつけよう。

その後僕は、萌音先輩希望の、りんご飴の屋台を探した。

あまりに閑散としていて、見つけるのに苦労しましたよ。

全然売れていないのか、店番さん、一人しかいない。

その上、暇そうにスマホをポチポチしている。

とても、接客業をやっているようには見えない態度だが。

その気持ちはよく分かる。

あまりにお客さんが来ないせいで、暇を持て余してああなったのだろう。

…なんか、買いに行くの憚れますね…。

でも、萌音先輩に頼まれたし…。

「…あのー…済みません…」

「…」

店番の女子生徒は、僕が声をかけたことに気づかず、相変わらずスマホをポチポチ。

「…あのー…済みません…」

「…はい?」

ようやく気づいてもらえた。

スマホ片手に、びっくりした顔でこちらを見ていた。

「りんご飴…買っても良いですか?」

「えっ…。買ってくれるんですか?」

買ってくれるんですか、って。

いかにお客さんが来ていないかを実感しますね。

分かる。めっちゃ分かりますよその気持ち。

「りんご飴ください」

「ありがとうございますっ…!」

凄く嬉しそうな顔。

「一本で良いですか?」

「あ、いえ20本ください…」

「畏まりました。…え、20本…!?」

驚きますよね。済みません。

20人で食べるのかな、って思いましたよね。

違います。一人です。

「あ、ありがとうございましたっ…」

女子生徒の店員さんは、びっくりしながらも、20本のりんご飴をビニール袋にどっさり入れてくれた。

ようやくお客さんが来てくれたと思ったら、一度に20本も売れたものだから、非常に嬉しそうだった。