それは、果たして本当にパフェと呼んで良いのか怪しい代物だった。

大きな紙のカップをグラス代わりに、美味しそうなスイーツがてんこ盛りになっている。

カップの中には、コーンフレークと数種類の小さな丸いアイスクリーム。

マカロン、カヌレ、マリトッツォ、チュロス、ひとくち台湾カステラ、そしてワッフル。

そこにたっぷりのホイップクリーム。そして隙間を埋めるかのように、色とりどりのグミと、タピオカが散りばめられていた。

「な、何なんだ…このカオスなパフェは…」

まほろ部長もびっくり。

「一昔前の流行りのスイーツを、全部ぶち込んだみたいな食べ物ですね」

「あぁ…。これ入れときゃお前ら満足なんだろ、っていう魂胆が見え見えだよな」

「どれも美味しかったよー」

食べたんですか。萌音先輩。

「確かに、どれも美味しそうですけど…単品なら…」

美味しいものばかりを組み合わせてるんだから、美味しいのは当然なんでしょうが。

だからって、何もかも全て盛りだくさんに盛るのはどうなんだろう。

ラーメン唐揚げハンバーグトンカツ定食、みたいな…。

嬉しいけど、出来れば単体で食べたかった。

そして、当然これほどの種類のスイーツを盛っていれば、その分食べ応えも上がる。

「凄いボリューム…。このパフェ一つ食べるだけで、お腹いっぱいになりそうですね…」

「え?萌音はまだまだ食べられるよ?」

「お前は大抵何でも四、五人前平気で食べるからな」

常人の胃袋レベルで考えてくださいね。

「お客さん達が口々に言ってたパフェっていうのは、このパフェのことですかね」

「?どういうことだ?唱」

「さっきから、道行くお客さん達が何度も口にしてるのを聞いたんですよ。パフェがどうのこうのって」

と、唱先輩が李優先輩に説明した。

そう、そうなんですよ。

彼らの言ってる「パフェ」っていうのは、この昔の流行スイーツ盛り合わせパフェのことなんでしょうか。

「あぁ…多分、それはこのパフェのことだろうな。中庭、凄い行列だったから」

えっ。

皆さん、このパフェの為にそんなに並んでるんですか?

「マジかよ。それでクレープ食べに来てくれる人がいないのか」

このパフェ一つ食べたら、もう今日は甘いもの、何も欲しくないでしょうね。

カロリー過多ですよ。

「畜生。何だって皆して、こんなゲテモノパフェに夢中なんだ?ハエか?インスタバエなのか!?」

そんな新種の蝿(はえ)みたいに言わないでくださいよ。

まぁ、一応見た目にはお洒落なので…カラフルで…物珍しいし…。

写真を撮りたくなる気持ちは、分からなくもない。

でも、これってそんな…行列に並んでまで買うようなものなのかな…。

と、失礼なことを考えていると。

「それ、いくらだと思う?」

「え?」

李優先輩が、この特製パフェを指差して尋ねた。

値段のことですか?このパフェの。

色んなものが乗ってるし…。結構お高いんじゃないですか。

喫茶店でパフェを注文しようと思ったら、大体7、800円くらいはしますよね。

たくさんトッピングを乗せてもらったら、その値段は1000円を越えることも。

こんなに贅沢なパフェなんだから、1500円くらいしても不思議じゃありませんよね。

でも、このパフェはあくまで、創立記念祭の屋台メニューだから…。

人件費や場所代かからない分、もう少し安いと考えて…。

「…1000円くらいですか?」

「残念。500円だ」

「!?」

僕は、思わず目が点になった。