さっきから、お客さん達が何度か口にしている言葉。

「パフェ食べに行こう」とか、「パフェ食べたばっかりだから」とか…。

…パフェとは、何ぞや。

「何処かでパフェ、売ってる屋台があんのかな…?」

「…ざっと見たところ、パフェの屋台なんてありませんけど…」

ぐるりと周囲を見渡すも、「パフェ」の文字は見つからない。

…パフェ…そんなに人気なんだろうか?

「どうだ、唱君。パフェの匂い、感じる?」

「…俺、警察犬じゃありませんからね」

ジトッ、とまほろ部長を睨む唱先輩。

…そもそも、パフェって匂いあります?

「よく分かんねーけど、もし本当にパフェ屋があるんだったら、大ピンチだぞ」

「えっ?」

「だって、自分らのクレープと被ってんじゃん!」

…パフェとクレープって、そんなに被ってますかね。

全然違う食べ物だと思うんですけど…。

仮にパフェを食べに行って、パフェが売り切れだったとして、「じゃあ代わりにクレープ食べようか」とはならないでしょう。

…なるのか?分からないですけど。

「そんな…考え過ぎですよ、まほろ部長…」

「何が考え過ぎなもんか。パフェの材料を考えてみろよ。フルーツ、ホイップクリーム、アイスクリーム…。パフェに使われてる材料は、大体クレープにも浸かってんじゃん」

…言われてみれば、確かに。

「で、でもそれはデザートクレープの場合でしょう?こちらには、おかずクレープもあるんだし…」

さすがに、パフェの上にソーセージは乗せないでしょう。

「甘い、甘いぞ。後輩君の考えは、まるでクレープのように甘い」

そうですか。

「現に、そのせいでクレープ屋に誰もお客が来ないんじゃん!由々しき事態だよこれは」

「…半分くらいは、僕らの格好のせいだと思いますけど…」

きっとそのパフェ屋は、まともな格好をしてパフェを作ってるんでしょう。

店員の格好って、やっぱり大事なんですよ。

…すると、そこに。

「相変わらず、閑古鳥が鳴いてんな。この店は」
 
「こけこっこー」

偵察任務に行っていた、李優先輩と萌音先輩が帰還。

あ、お帰りなさい。

あと萌音先輩。それはニワトリです。

「おぉ、お二人さんお帰り!」

「どうだ。客は一人でも来たか?」

「…」
 
「…そうか…」

無言の返事に、李優先輩は悲しい現状を察してくれたらしい。

ありがとうございます。

誰も来ないんです。
 
「で、そっちはどうだった?何か発見はあったか」

まほろ部長が尋ねると。

「あぁ。校内をぐるっと一周してきたんだが…実は、さっき中庭に…」 

「はい、皆にお土産だよー」

と言って、萌音先輩は両手に持ってきた「それ」を、僕達の前に置いた。

…!これって…。

「…中庭で、生徒会の屋台が売ってた特製オリジナルパフェだ」

李優先輩が、そう説明してくれた。

…まさか。

さっきから、お客さん達が口にしていた「パフェ」の正体って…これのこと?