「…まほろ部長の隠れた趣味ですか?」

「ちょっと待て。それは誤解だよ後輩君。その軽蔑した目、やめてくれ」

別に、軽蔑なんてしてませんよ。

人の趣味は自由ですからね。

まほろ部長が…その…隠れた少女趣味をお持ちだとしても。

これまで通り、変わらない態度で接することをお約束しますよ。

…多分。

「可愛いエプロン、皆でつければ怖くない、ってね」

なんて、赤信号みたいなことを言いながら。

まほろ部長は、躊躇いなくエプロンをつけ、ネコ耳カチューシャをつけていた。

…嘘でしょう。

「これってどういうことなんですか…。李優先輩…」

「…俺に聞くなよ…」

李優先輩も、エプロンとカチューシャを前にドン引きの様子。

俺に聞くなと言われたので。

「じゃあ、唱先輩…」

「じゃあ、って俺に聞かれても…。残念ですが、こういうことです」

「…!?」

あろうことか唱先輩は、平然とした顔でエプロンをつけ、カチューシャまでつけていた。

「唱先輩には…プライドってものがないんですか」

「プライドがあるから着てるんですよ。こういうのは、躊躇ったり恥ずかしがったりすると余計恥をかくんです」

うっ…。

「恥ずかしがりながら恥を晒すより、いっそ堂々と恥をかいた方がマシです」

格好良い。

これでネコ耳カチューシャをつけていなかったら、もっと格好良かっただろうに。

更に、喜んでネコ耳とエプロンをつけている先輩がもう一人。

「わーい、見て見て李優。萌音、似合う?」

エプロンをつけ、カチューシャのネコ耳をひょこひょこさせて。

萌音先輩は、くるりとその場で一回転してみせた。

…女性が着ると、やっぱり似合いますね。

特に萌音先輩は美人でいらっしゃるから…。

「お、おぉ…。まぁ、良いんじゃねぇの…?」

萌音先輩の可愛らしい姿に、彼氏の李優先輩はたじたじ。

…僕の前でイチャイチャしないでください。

「この制服、萌音が選んだんだよ」

と、ここで萌音先輩が衝撃の告白。

「自分が、『なんか、お揃いの制服とかあるとかっこ良いよな』って言ったら、萌音ちゃんがこの制服をレンタルしてくれたんだよなー」

「うん」

まほろ部長が言うと、萌音先輩がこくりと頷いた。

…制服があると格好良いのは認めますが、それで何故ネコ耳カチューシャと、フリフリピンクエプロンになるんですか。

「萌音先輩…何故…」

「この間、李優と一緒に行ったアイスクリーム屋さんで、店員さんが可愛いエプロン着てたから」

「…」

「あれと同じようなの、萌音も着てみたかったんだー」

とのこと。

コスプレに憧れる高校生ですか。あなたは。