それから僕達は、創立記念祭に向けて、クレープ作りの練習に励んだ。

李優先輩は、自らが腱鞘炎になったせいで僕達が苦労していると思い込み、罪悪感を感じたらしく。

覚えの悪い僕達の為に、あれこれ工夫してくれた。

いくら言っても火力が強過ぎるまほろ部長の為に、適切な火力を保てるように、コンロのツマミに印をつけてくれ。

そのお陰で、生地が焦げにくくなった。

いくら言っても大量の生地を流し込まんでしまう唱先輩の為に、一回に流し込む生地の量を、大きめのスプーン一杯分、と決めてくれた。

そのお陰で、薄い生地が焼けるようになった。

李優先輩、万歳。

更に、ちょっとずつ慣れてきたものの、まだたまに、引っ繰り返す時に生地を破ってしまう不器用な僕に対しては。

「大丈夫、俺も最初の頃はよく同じミスしたよ」とか。

「少しずつ失敗率減ってるじゃん。その調子」とか。

「俺より遥かに覚えが良いな。上手だよ」とか。

凄く優しい言葉で励ましてくれて、何だか泣きそうになった。

褒めるの上手いですね、李優先輩。

加那芽兄様を彷彿とさせる優しさ。

そのお陰で、心が折れることなく頑張れました。

そして、どんなに生地が焦げてても、半ナマでも、破れてても。

魔法のアイテム、メープルシロップをかけて、もぐもぐと残らず平らげてくれた萌音先輩も。

彼女のお陰で僕は、例え失敗しても食べ物を無駄にしてしまうことはない、と自分を慰めることが出来ました。

更に、僕を助けてくれたのは先輩達だけではない。

加那芽兄様もまた、僕をたくさん助けてくれました。

僕がクレープ生地作りの練習をしている間に、加那芽兄様はあっという間に活動記録冊子を作り上げてくれて…。