翌日。

今日もガスコンロを借りてきて、クレープ作りの練習を行っている。

その最中に、昨日加那芽兄様に提案されたことを、早速先輩達に尋ねてみると。

「え、マジ?後輩君の兄さんが冊子作り手伝ってくれるの?よろ!」

物凄く、軽い口調で許可された。

…よろ、って…まほろ部長…。

「それなら、我々は心置きなくクレープ作りに従事出来ますね」

「悪いな…。迷惑にならない範囲で頼む」

「助っ人だー。わーい」

他の先輩方も、特に異論はない様子。

…良かった。

「それじゃ、僕達は…クレープの生地を、せめてまともに焼けるように…努力しましょうか…」

「まともに…?出来てるじゃん、ほら!」

まほろ部長は、自分が焼いた「クレープ」を掲げて見せたが。

「何処がまともなんだよ。焦げまくってるじゃないか」

そんなまほろ部長を、ジトッ、と睨む李優先輩。

部長…いい加減、火力に頼るのやめましょうよ…。

そんな焦げたクレープを食べたら、生地の苦さとホイップクリームの甘さで、頭がバグりそうです。

「しかし難しいですよね。クレープの生地を焼いてるはずなのに、何でただのホットケーキになるんでしょう」

唱部長は、不思議そうな顔で自分の焼いた「クレープ」を眺めていた。

相変わらず、それはクレープの生地と言うより、ただのホットケーキ。

…しかも、真ん中が半ナマ。

「お前は一回に生地を流し込み過ぎなんだよ。どうやってその生地で具材を巻くんだ」

呆れ果てた李優先輩。だったが。

「メープルシロップかけたら美味しいよ」

そんな半ナマの「クレープ生地」に、萌音先輩はメープルシロップをかけて、もぐもぐと食べていた。

食べ物を無駄にしないのは、良いことでも思いますけど。

「…前途、多難ですね」

「…あぁ」

指導に当たってくれていた腱鞘炎の李優先輩が、嘆くように頷いてくれた。

…さて、僕も本腰入れて練習しないとな…。