「なんてことだ…!小羽根の、可愛い、白魚のような手が、火傷…!」

「…あの、大丈夫です。別に、全然痛くありませんから」

「小羽根がこんなにも苦しんでいたとも知らず、私は呑気に家で待っていたなんて…。なんて愚かなんだ、私は!」

「別に加那芽兄様は愚かじゃありませんよ」

「やっぱり、知り合いのマフィアに依頼して小羽根を連れ戻してもらうべきだった…!」

「…それはやめてください」

…言っちゃいましたよ。マフィアって。

良かった。僕、危うくマフィアに連れ去られて、死ぬほど恐ろしい思いするところだった。

絶対にやめてくださいね。

どうしよう。加那芽兄様、また変なスイッチが入っちゃった…。

「大丈夫?小羽根。大丈夫かい?」

僕の指先を見つめて、心配そうに問い掛ける加那芽兄様。

「大丈夫です。全然平気です」

「だよね!痛い思いをしたんだよね。可哀想に…!」

加那芽兄様、僕の話聞いてます?

「一体、誰に何されたの?」

「自損事故です。熱いフライパンにうっかり触っちゃって…」

「熱したフライパンを押し付けられた!?それはれっきとした傷害罪だ」

だから、違いますって。

まともに僕の話を聞いてくださいよ。

熱したフライパンを押し付けられたなんて、そんなこと一言も言ってない。

「おのれ、私の目の届かないところで、小羽根に酷い真似を…。…生まれてきたことを後悔させてやる」

加那芽兄様が言うと冗談に聞こえないので、本当にやめてください。

「あの。加那芽兄様、落ち着いてください。本当に違うんです」

「大丈夫だよ、小羽根。そんな不埒者共に同情してやる必要はない。私が、小羽根の仇を取ってあげるからね!」

「…だから、話を聞いてくださいって…」

あぁ、もう。話通じないんだから。

何だかもう、違う意味で泣きそう。