「あ?李優君じゃないか。おっそ。何処行ってたんだよ」

「殴るぞ。あんたに言われて、材料買いに行ってたんじゃないかよ」

「おぉ、そうか!お疲れさん!」

佐乱先輩は、買ってきたばかりの食材が入ったエコバッグを、調理台の上に置いた。

か、買い出しに行ってくれてたんですね。

「佐乱先輩…。ありがとうございます…」

「気にするな。あと、まほろの無茶振りも気にするなよ。適当にあしらっとけば良いから」

…分かりました。今後はそうします。

「よーし、じゃあ材料も揃ったことだし、そろそろ始めるとするか!」

えぇっと…。そんな軽いノリで始めちゃって良いんですか?

「分担とか…決めなくて良いんですか?」

野菜を切る係、味付けをする係、食器を洗う係…とか。

小学校や中学校の時の家庭科の調理実習では、誰がどのメニューの担当するか、細かく役割分担してから調理に取り掛かったものだが。

何も決めずに始めちゃうんですか。それ、本当に大丈夫ですか…?

「分担?良いだろ、そんなの。臨機応変に行こうぜ」

軽い口調で言ってますけど、本当にそれで大丈夫なんですか。天方部長。

臨機応変と言えば聞こえは良いですけど、それってつまり行き当たりばったりってことであって…。

「時間が惜しいですね。早く取り掛かりましょう」

「萌音、パスタ作ろーっと」

あぁ…。部長に負けず劣らず自由奔放な弦木先輩と久留衣先輩が、軽いノリで調理を始めてしまった。

…こうなったからには、僕も覚悟を決めるしかなかった。

僕も、それほど料理が得意な訳じゃないし…。

ここは先輩達に任せながら、自分に出来ることを手伝うしかないだろう。



…と、思っていたのだが。