「…残念ながら…自由研究部のクレープ屋は、廃業ですね…」

「はえーよ。まだ始まってもないのに」

だって、これもう開店を諦めるレベルですよ。

「大丈夫ですよ小羽根さん。練習すれば出来るようになりますって」
 
と言う唱先輩の焼いたクレープは、ボロボロのビリビリ。そしてコゲコゲ。

クレープじゃなくて、使い古したタオルみたいになってる。

「どうよ、自分のクレープ捌き。めっちゃ美味そうだろ?」

と言う、ドヤ顔のまほろ部長の焼いたクレープは、分厚くてちっちゃくて、そしてコゲコゲ。

クレープじゃなくて、ただの焦げたホットケーキみたいになってる。

あれにホイップクリームや果物を巻いても、生地があまりに分厚くて、クリームに到達する前にお腹いっぱいになりそう。

おまけに、火力だけを優先し過ぎたせいで。

表面はコゲコゲなのに、箸でちょっとつっついてみたら、中からトロッと半ナマの生地が流れ出した。

で、萌音先輩はと言うと。

「ペロッ」

「こら、萌音。生地を舐めるんじゃない」

味見係とばかりに、まだナマ状態の生地を指にくっつけて、ペロペロ舐めていた。

絶望的な状況。

…。

「…やっぱり廃業しましょう」

「ちょっと。諦めんなって後輩君」

だって、これはもう無理ですよ。

ちょっと下手くそなクレープ、どころじゃない。

人間が食べて良い代物じゃない。

ましてや、お金を出してお客様に提供しようものなら、訴えられるレベル。

絶対に駄目です。100円でも、いえ、10円でも売れません。

訴えられる前に、廃業するのが吉。

もう、活動記録冊子の無料配布だけで良いじゃないですか。

「もうちょっと頑張ろうぜ。諦めるのは早い。創立記念祭までに、クレープ作りの練習をすんだよ」
 
「今この状態なのに、練習して人に提供出来るレベルに達するんですか…?」

笑い事じゃ済まないんですよ。

どうするんですか。クレープの中身だけあって、肝心の生地が作れなかったら。

…その時はいっそ、普通にパンケーキを焼いて、ホイップクリームと果物添えパンケーキとして販売しましょうか。

いっそ、その方が売れるような気がする。

「どうしてくれるんだ、李優君。後輩君が機嫌を損ねちゃったじゃないか」

「そ、そう言われても…悪かったと思ってるよ」

謝らないでください、李優先輩。あなたは悪くありません。

「良いんですよ李優先輩。謝らなくて…。あなたは日頃の行いが良いせいで、たまに失態を犯しても全然腹が立たないんです。まほろ部長と違って」

「そうか。やっぱり日頃から徳を積んでおくべきだな」

「ちょっと!後輩君が辛辣!自分がいつやらかしたと言うんだよ…!?」

さぁ。いつでしょうね。