「でも、イチゴは材料費が高く付きますよ」

唱先輩、さっきもそう言ってましたよね。

客商売をする以上、材料費は出来るだけ安く抑えたいのが本音。

「そんなに高いんですか?イチゴ…」

「季節にもよりますけど、スーパーで一パック5、600円くらいしますよ」

え。そんなに高いの?

クレープの値段じゃないですか。

「いくら、薄くカットして使うにしても…」

「ほぇー…。イチゴさんって可愛いのに、お値段は可愛くないんだね…」

「マジかよ。やっぱりバナナにしようぜ」

バナナの方が、まだ割安ですね。

でも…イチゴのないクレープ、か…。

ちょっと切ない気分になりません?僕だけ?

サーモンの入ってないお寿司セット、みたいな…。

「イチゴのないクレープなんて、出汁の入ってないうどんと一緒だよ…」

萌音先輩、そこまで言いますか。

出汁の入ってないうどん。それはただの茹でうどんです。

しかし、そこは料理経験者、李優先輩。

ちゃんと抜け道を知っていた。

「大丈夫だ。冷凍のイチゴを使えば良い」

えっ。冷凍のイチゴ?

「そんなのあるんですか…?」

缶詰めのフルーツがあるのは知ってますけど、冷凍品もあるんですか?

「あぁ。大抵のフルーツには、冷凍品がある。生モノより取り扱いが楽だし、きちんと解凍すれば、味も新鮮なものとそんなに変わらないよ」

とのこと。

「何より、冷凍の方が遥かに割安だ」

「そうなんですか…」

そんな方法があったなんて。目から鱗。

それなら、冷凍のイチゴを購入した方が良いかもしれませんね。

イチゴだけでなく、冷凍品で賄えるフルーツは、冷凍品で済ませた方が良いかも。

「何なら、ホイップクリームやカスタードクリームも、大容量の冷凍品を使うのも手だな」

「ホイップクリームやカスタードクリームも、冷凍品があるんですか?」

「あぁ。あるぞ。しかも結構美味しい」

なんて便利な時代。

それなら、クレープ生地の冷凍品も売ってたら良かったんですけど。

でも、クレープ生地まで冷凍だったら、それもうただの冷凍食品屋さんですよ。

「じゃあ、肝心なのはクレープ生地だけですね」

「そうだな。メニューをあんまり増やし過ぎても困るだけだし…」

すったもんだの問答の末。

結局、メニューはチョコバナナ、イチゴ、抹茶、キャラメル、フルーツミックス。

おかずクレープとして、ソーセージとツナマヨの、計7種類ということにした。

クレープ屋としては、非常に貧弱なメニューのように思えますけど。

まぁ、5人で作るクレープ屋だったら、これくらいが限度ですよね。

「よーし。メニュー表も作っておかないとな」

「写真も必要ですよね」

「俺は、クレープ生地作りの練習をしておくよ」

まほろ部長と唱先輩、李優先輩の順で言い。

自分も何かしなければ、と思ったらしい萌音先輩は。

「じゃあ、萌音は味見係をやる」

とのこと。

「…萌音先輩。あなたは、李優先輩の応援をお願いします」

「うん、分かったー」

萌音先輩に応援してもらったら、きっと李優先輩もやる気が出ることだろう。