と、いう訳で。

僕は、早速自由研究部の、今年一年の活動記録をまとめることにした。

帰宅後、僕は自分の部屋にこもって、机と向かい合った。

さて、それじゃ書きましょうか。

4月に、僕が入部して以降の記録ですよね。

まず、最初に入った時は料理研究部で…。

思い出を振り返りながら、早速原稿をまとめていると。

「小羽根ー。小羽根、戻ってる?」

こんこん、と部屋の扉がノックされた。

…ん?

「あぁ良かった。小羽根、戻ってたんだね。お帰り」

「あ、加那芽兄様…。ただいま…」

加那芽兄様が、ひょっこりと現れた。

どうも。

「どうかしたんですか?加那芽兄様…」

「いやね、可愛い小羽根の顔を見ようと思って」

…。

「今日は仕事で取引先の気色悪いおっさんの顔ばっかり見てきたから、小羽根の顔を見て目の保養をしないとね」

真面目な顔して、何を言ってるんですか。

僕を見たって、何の目の保養にもなりませんよ。

「それから、帰りにチョコレートを買ってきたんだよ。『ヘンゼルとグレーテル』っていう珍しいお菓子を売るお店で。一緒に食べよう」

「あ、えぇと…それは…」

是非とも…ご一緒したいんですが。

残念ながら、今は…。

「それに、今日美味しい紅茶が届いたんだよ。小羽根と一緒に飲み、」
 
「済みません、加那芽兄様…。残念ですけど、今日は無理なんです」

「えっ、何で!?」

愕然とする加那芽兄様。

「その…今日はちょっと、いそが、」

「何が不味かったんだ?小羽根はチョコレートが好きだったはず…!ほら、私が何年もかけて作り上げた、小羽根の好きなものリストに書いてある…!」

加那芽兄様は、年季の入った手帳を取り出した。

そんなこと書かなくて良いし、わざわざ僕の好きなものなんて覚えてなくて良いです。

加那芽兄様って頭が良いのに、どうにも頭の使い方を間違えてる気がする。

「一体どうしたって言うんだ…。何で小羽根が、私のお茶の誘いを断るんだ…」

「…あの。別に大した理由じゃないです。ただ今日はいそが、」

「まさか…小羽根の反抗期…!?」

「…だから、話を聞いてくださいって」

一回お茶の誘いを断ったくらいでこれですよ。

大袈裟にも程がある。

「今日は忙しいんです。僕、やることがたくさんあって…」

「…何やってるの?まさか、また宿題?」

え?

「小羽根は真面目な良い子だからね。予習復習、宿題も全部真面目に取り組む良い子だ。そして可愛い。それは認める。世界の誰もが認める事実だ」

「加那芽兄様以外、誰も認めてないと思いますけど」

「でも、頑張り過ぎるのは小羽根の欠点だと思うんだ。時には息抜きも必要だよ。良いじゃないか。宿題の一つ二つ無視しても」

何言ってるんですか。駄目に決まってるでしょう。

子供に「宿題しなさい」と言う保護者はいても。

「宿題を無視しなさい」と言う保護者は、加那芽兄様くらいだ。

そういう教育はどうかと思います。

あと、別にこれ、宿題ではありません。