「何だと…!?結局クレープ屋なのかよ!」

良いじゃないですか。クレープ屋さん…。

屋台の定番ですよね。

「そう言うまほろは、なんて書いたんだ?」

「え?自分、回転寿司屋やりたかった」

…それは無理なのでは?

「へいらっしゃい!良いネタ上がってるよ!みたいなさー」

「…生モノは無理だろ…」

もしものことがあるのでね。安易に生モノを提供するのはやめましょう。

責任が持てません。

「あと、ラーメン屋も良いよな!へいらっしゃい!ラーメン一丁ね!みたいなさー」

「お前それ、へいらっしゃい言いたいだけだろ…」

僕は言いたくないんで、クレープ屋で良かったと言えるのかもしれない。

「…ちなみに、李優先輩と唱先輩はどんな案を…?」

「俺は、サンドイッチの屋台ってどうかなと思って、そう書いたんだが…」

と、李優先輩。

サンドイッチか。良いですね。

歩きながら片手で食べられるのは、ポイント高いと思います。

中に具材を挟むだけで、作るのも簡単そうだし…。

「最初は、焼きそばとか、アメリカンドッグとか、定番どころを考えてたんだが…。その辺は、多分他の部活がやるだろうなと思って…」

「そうですね…」

「それに、あんまり客がたくさん来る屋台にしたら、俺の身が持たない」

李優先輩は、真顔だった。

…この中で料理が上手なのって、李優先輩だけですもんね。

作るのが大変な料理の屋台にしてしまったら、李優先輩が過労死してしまう。

サンドイッチだったら、具材にもよるけど、一応挟むだけで作れるし…その方が良かったのかも。

…あれ?本当にクレープで良かったのかな。

「え、じゃあ唱先輩は…?何の屋台を…」

「俺ですか?俺は趣向を変えて、全国津々浦々の香水のサンプルを展示して、香水の試聴会ならぬ、試嗅会を開催するのはどうかと思うんですが」

「…それは新しい試みですね…」

…人、来るんですか?それ。

唱先輩みたいな、香水好きな人しか来ないのでは…?

「…やっぱりクレープで良かったのかもしれませんね。李優先輩」

「…だな」

「そう言う小羽根さんは?なんて書いたんですか」

え、僕?

「僕のことは…別に良いんですよ…」

「何です。自分のことは棚に上げて。人に聞くなら自分のことを先に言ってくださいよ」

「そ、それは…」

「さぞかし良い案を書いたんでしょうね?」

…意地悪ですよ。唱先輩。

でも…皆暴露したんだから、僕も言った方が良いですよね。

「僕は…その…」

「あ、このわたがし屋さん、っての後輩君?」

「わたがしだって。可愛いねー」

はっ!?

しゅばっ、と顔を向けると。

まほろ部長と萌音先輩が、箱の中からメモ用紙を全部出していた。

うわぁぁぁぁぁ。