別の仕事…?

「…何ですか。別の仕事って」

「今回の創立記念祭は、無料冊子の配布だけじゃない。なんと、屋台の出店もやるぞ」

えっ?

「屋台?何やるんですか?」

「それは今から考える。ここは民主的に…っと」

まほろ部長は、自分のメモ帳を取り出して、ビリビリとページを破り始めた。

…何?

「はい、それぞれ何の屋台をやりたいか、意見を書いて箱に入れてくれ。そこから一枚引いて、出てきたヤツにする」

…そんな決め方で良いんですか?くじ引きで?

「いや…そこは投票制にしましょうよ…」

「良いんだって。くじ引きの方が面白いだろ?」

「そんなこと言ってるから、16回引いても推しが出ないんですよ…」

「言うようになったねぇ、君!」

…だってそうじゃないですか。

「良いから良いから。ほら、各自どんな屋台をやりたいか、書いて提出してくれ」

まほろ部長は、部員それぞれに紙切れを渡してきた。

…はい、どうも。

「屋台…屋台ね…。それって、食べ物系?それともイベント系?」

「何でも良いぞ。食べ物でもイベントでも」

屋台って言うと、食べ物のイメージですけど。

金魚すくいとか射的とか迷路とか、イベント系の屋台も楽しいですよね。

屋台の可能性は無限大。

とはいえ、僕達は5人しかいない。

5人で切り盛り出来る屋台、と考えると…若干、選択肢が狭まるが…。

大人も子供も楽しめて、僕達だけでも切り盛り出来そうなお店…。

かつ、季節性も考えないといけませんよね。

かき氷やアイスクリームは夏しか売れないし、おでんとか肉まんは冬しか売れないし…。

それらを全部考慮すると…。

僕は、うーん、としばし考え。

自分の意見を、さらさらとメモ用紙に記入。

それを箱に入れた。

「さて、どうしたものですかね…」

「いきなり言われてもな…。出来るだけ簡単に出来るものが良いよな…」

先輩達も悩んでいらっしゃる。

「萌音、今クレープ食べたいから、クレープ屋さんにしよーっと」

萌音先輩は、クレープ屋さん、とメモ用紙に大きく書いていた。

…隠す気ゼロですね、萌音先輩は…。

「…良いか萌音。もうちょっと真面目に考えろ」

この萌音先輩の浅はかさに、思わず李優先輩が口を挟んだ。

「ほぇ?」

「お前が食べたいものじゃなくて、人様が食べたいと思うものを考えろ。それがお店作りの基本ってものだろ」

「えっ?自分が食べたいと思わないものを人に提供するの?それっておかしくない?」

「ぐっ…。ぐぬぬ…」

珍しく、李優先輩の方が言い負かされていた。

…確かに。と思ってしまった自分がいる。

自分がお客さんだったら食べたいと思うか。それも大切ですけど。

自分が作ってて「美味しそう!」「楽しい!」って思わないと、お店をやるモチベーションってものが上がりませんからね。

萌音先輩の言うことももっともである。