「まほろ部長…今度は、何部なんですか?」

「新しい部を始めるって言うか、名称を自由研究部に戻すことにする」

えっ?

「戻す…?それってどういう魂胆なんですか?」

「…言うようになってきたな、後輩君…。君の成長が嬉しいよ」

良いから、どういうつもりなのか教えてください。

「魂胆も何も、原点回帰だよ。そろそろアレの時期だからな」

…アレ?

アレって何だろう?

すると、他の部員達も。

「あー…。アレか…」

「そういえば、そんな時期でしたね」

李優先輩と唱先輩は、何やら気づいたようだ。

えっ。先輩方が知ってて、僕か知らないことなんですか?

何だか疎外感…を感じたのも一瞬。

「…?…??」

萌音先輩も分かってないようで、首を傾げていた。

良かった。僕だけじゃなかった。

「…それで、何なんですか?アレって…」

「そりゃあ君…我が校最大のイベント、創立記念祭だよ」

まほろ部長に言われて、ようやく僕もハッとした。

…そうだった。

「創立記念祭ですか…。そういえばそうでしたね」

僕は、まほろ部長のこの一言で理解したが。

何故か萌音先輩は、相変わらず首を傾げたままだった。

「…そーりつきねんさい?」

「…萌音、お前は知ってなきゃ駄目だろうが…。去年経験しただろ」

「おぉー。そうだっけ」

…萌音先輩。先輩であるあなたは、「知りません」は通用しませんよ。

創立記念祭とは、この学校の文化祭のことである。

僕は一年生だから、まだ経験したことはないけど。

入学する前、学校見学を兼ねて、加那芽兄様と一緒に創立記念祭を訪れたことがある。

あの時はお客さんとして参加したが、今回は開催する側、ホストとして参加することになるのだ。

…何だか新鮮な気分。

「創立記念祭では、部活単位で出し物をするからなー。未来の部員候補獲得の為にも、記念祭の時くらいは真面目な名称をつけておかないと」

それで、自由研究部に名前を戻すと…。

…真面目な名前なんですか?それ…。

まぁ、でも、ウチの部活って、かなり名前詐欺みたいなところありますから。

健康追求部に入りたいと思って受験して、いざ入学してみたら。

その頃には健康追求部なんてなくなっていて、まったく別の部活に変わっている…なんてことも有り得るかもしれない。

さすがに、それはあまりにも気の毒なので。

創立記念祭の時だけは、ふざけるのはやめて、真面目になりましょう。

…出来れば、創立記念祭の時だけじゃなくても、いつも真面目でいてください。