まほろ部長の目、これでもかってくらいかっ開いていて、怖いんですけど。

「おぉ、良かったなまほろ」

「小羽根さんにおんぶに抱っこじゃないですか」

「すごーい。小羽根君ってお金持ちなんだね」

いえ、萌音先輩。僕がお金持ちなんじゃなくて。

僕の住んでる家がお金持ちなだけです。

それはそれとして、まほろ部長の反応がないのが気掛かりなんですが。

「あのー…まほろ部長…?」

大丈夫ですか?

固まってますよ。銅像みたいに。

…もしかして、機嫌損ねたのだろうか?

自引きしたかったのに!もらいものじゃ意味ない!とか?

それなら、無理に受け取ってくださいとは言わないが…。

「あの…まほろ部長…これ、要らないんですか?」

「…」

と聞くと、まほろ部長はぶんぶんと首を横に振った。

「…要るんですか?」 

「…」

と聞くと、まほろ部長はぶんぶんと首を縦に振った。

やっぱり要るらしい。

「じゃ、どうぞ」

と言って、ルトリアさんのアクリルキーホルダーを渡すと。

まほろ部長は、表彰状でも受け取るかのように、恭しく受け取り。

そして。

「…やったぜ!ウチの後輩君超有能!見たか?見たかこれっ!?」

突然喋り始めた。

まるで宝石のように、アクリルキーホルダーを掲げる。

「なんて尊いんだ…!素敵!後輩君最高!」

「いや、あの。僕じゃなくて…。兄がくれたんですけど」

「後輩君のお兄ちゃん最高!」

はい。

「自分の代わりに、お兄ちゃんにハグしてキスしておいてくれ」

「…しませんよ…」

真顔で何言ってるんですか。

それはまぁ、加那芽兄様だったら、あながち嫌がらないかもしれませんけど。

でも僕が嫌です。

「じゃあ、今日帰りにビッグMKバーガー奢ってやるよ」

「…もう、しばらくは結構です…」

胃もたれが完全に治ったら、その時また誘ってください。