翌日。の、朝。

「うぅ…。まだ、胃が重い…」

間違いなく、昨日の食べ過ぎが原因である。

やっぱり暴飲暴食は良くないですね。腹八分目を心掛けましょう。

…って、今の僕が言ってもまったく説得力がありませんが。

そのまま、朝食を食べに向かうと。

「あれっ。小羽根大丈夫?」

朝食の席で、加那芽兄様が心配そうな顔で僕に声をかけた。

「何だか疲れてるように見えるけど…」

「あ、いえ…。疲れてるんじゃなくて…」

…ただ、食べ過ぎなだけです。

「ちょっと、その…胃もたれが…」

「あぁ、成程…。昨日、学校の帰りにファーストフード店に行くって言ってたね」

はい、それです。

そして。

「…っていうことは、小羽根の前にあるそれは?」

「はい…。食べ切れなかった、ビッグMKバーガーです…」

昨日、食べ切れなかった分をテイクアウトにしてもらって。

僕は、一つ残っていたビッグMKバーガーと、ポテト、ナゲット、そしてアップルパイをもらった。

そしてその残りが、今、朝食として僕の前のテーブルに載っている。

…昨日帰ってきた後、テイクアウトしたこれらのメニューを、使用人の志寿子さんに渡したんですよ。

「僕、明日の朝食にこれを食べるので、他のものは用意しなくて良いです」って。

一晩経てば、だいぶ胃の調子もマシになるだろうと思って、そうしてもらったのだが…。

…リベイクされて、ほかほかと湯気を立てるビッグMKバーガーと、付け合せのポテトとナゲット達。

そして、デザートとしてそびえるアップルパイを見て。

正直、吐き気を催してしまった。

しかし、これは決してビッグMKバーガーのせいではない。

僕が昨日食べ過ぎてしまったせいである。

…どうしよ。これ。

「…うぅ…」

湯気を立てるバーガーを見ても、少しも食欲が湧かない。

やっぱり、これは下げてもらって…。そうだ。自分でお弁当箱に詰め直して、ハンバーガー弁当にしようか…。

…と、考えていると。

「小羽根。それ、もし要らないなら私が食べても良いかな?」

「えっ?」

加那芽兄様が、皿の上に乗ったビッグMKバーガーを指差した。

「代わりに、小羽根に私の朝食を上げるよ。交換しよう。どう?」

「えっ…そ、そんな…」

た、食べるんですか?加那芽兄様が。これ。

「しょ、庶民の食べ物ですよ?『MKハンバーガー』の…」

「私だって庶民だよ。小羽根が食べたものなら、私にだって食べる権利があると思うけど?」

「それは…そうかもしれませんけど…」

僕と加那芽兄様は、立場が違うじゃないですか。

王侯貴族がカップ麺食べてるようなものですよ。

いや、貴族だってカップ麺くらいは食べるのかもしれませんけど。

それじゃ、加那芽兄様がビッグMKバーガーを食べても、何の問題もない…?

…って、そんな訳ないじゃないですか。

いくらなんでも、加那芽兄様に残り物のハンバーガーを食べさせる訳にはいかない。

そんなことしたら、僕が無悪家のお屋敷の方に怒られますよ。