気分を変えるどころか、まほろ部長は余計落ち込んでしまったようである。

…気の毒。

「…こうなったらヤケ食いだ。ヤケ食いしてやるーっ!」

まほろ部長は、半泣きでハンバーガーを手に、ヤケ食いを始めた。

こういう食べ方は良くないと思うんですよ。

全然味わってないじゃないですか。美味しいんだからちゃんと味わって食べましょう。

「さて。我々も休んでいる暇はありませんよ。まだまだ残ってますから」

と、唱先輩がトレーの上を指差した。

うっ…そういえばそうでした…。

うって言っちゃいけませんよね。

「マジかよ…。俺もう食べたくないんだけど…」

「萌音はまだ食べられるよ?」

「萌音はもうやめとけ。また胃もたれするぞ」

「はーい」

萌音先輩、ドクターストップならぬ李優先輩ストップで、離脱。

残った食べ物は、全部僕達で何とかせねばならない。

…ふぅ。

僕はこれ以上、ハンバーガーは食べられそうにない。

仕方なく、マカロンとポテトを交互にちまちま摘んでいたが…。

「…小羽根さん。あなた、マカロンとポテトを数本齧ることでお茶を濁そうとしてますね」

「ぎくっ…」

ジロッ、と唱先輩に睨まれた。

「駄目ですよ。まだいっぱいあるんだから。はい、アップルパイ」

「わ…分かりました…」

アップルパイを手渡され、僕は震える手で受け取った。

…食べ物を粗末にするのは駄目ですよね。頑張ります。

「あむ…」

既にお腹がいっぱいの状態だけど、何とかアップルパイを詰め込む。

うわ。このアップルパイ美味しい。

もう冷めちゃってるのが残念。

あったかかったら、きっともっと美味しかっただろうに。

唱先輩も、李優先輩も続けて食べていたし。

まほろ部長も、ヤケ食いを続けていたが。

5分ほどで、ヤケ食いストップ。

「…やべ。もう満腹だわ」

「…でしょうね」

ヤケ食いなんかするからですよ。

僕も頑張ったけど、アップルパイを食べ切るので精一杯だった。

…これ以上はもう無理です。

唱先輩と李優先輩も、ついに手が止まっていた。

「…段々冷めてきてしまったのが痛いですね」

「あぁ…。ドリンクも氷が溶けて、水っぽいし…」

熱々だったポテトやナゲットは、既に冷めきって、ポテトはもう、しなしなになっている。

しなしなポテトも美味しいですが、僕は熱々ポテト派です。

ドリンクの氷も溶けて、ぬるく、味が薄まっている。

まだ開けていないけど、残りのハンバーガーも多分、冷めきってしまってると思われる。

「…仕方ない。ここまでだな」

まほろ部長が、皆にストップをかけた。

「え…じゃあ、これどうするんですか…?」

「大丈夫だ、無駄にはしない…。残りは全部、テイクアウトだ」

テイクアウト?

「持ち帰り用の紙袋、もらってくるわ…」

あ、成程。そういうサービスがあるんですね。

良かった。それじゃ、残りは家に帰ってから食べましょう。

「冷めたポテトとナゲットは、オーブントースターで温めると美味しく食べられるぞ」

李優先輩が、豆知識を教えてくれた。

「アップルパイやチョコパイも、その方法でイケる」

「そうなんですか…。ありがとうございます。やってみますね」

持ち帰りでも美味しく食べられる方法があるとは。是非やってみます。

…今日はお腹いっぱいなので、明日の朝食にしますね。