「はぁ…はぁ…。じゅ、12個目…」

…何で疲れてきてるんですか。まほろ部長。

ただアクリルキーホルダーを開封しているだけなのに。

テーブルの上には、既に開封された11個のアクリルキーホルダーが。

その内訳は、ルクシーさん4個、ミヤノさん3個、エルーシアさん3個、そしてベーシュさんが1個。

…最推しのルトリアさん、未だ0個。

だいぶ、被りと偏りが酷くなってきましたね。

途中までは、「またルクシー君かよー!」と笑って言っていたのに。

段々、顔が引きつり始めていた。

雲行きが怪しくなってきました。

「12個目…ミヤノ君…!」

あ、これでミヤノさんも4個に…。

「何でだ?何でルトリア君が当たらないんだ…!?」

「何気に、ベーシュさんもさっきの1個以外当たってませんもんね」

「それなんだよ!地味に辛い!」

他のメンバーのことも、嫌いではないと言っていたけど。

こうも推し以外のメンバーばかり当たると、段々喜びよりも苛立ちが勝ってきますよね。

その後、青ざめた顔で開封を進めるまほろ部長。

16回も引けるなら余裕!とたかを括っていたまほろ部長だったが…。

13個目はルクシーさん、14個目もルクシーさん。

15個目はミヤノさんで、そしてついに…。

「ら、ラスイチ…!」

運命の、最後のアクリルキーホルダーの開封。

この最後の1個に、まほろ部長の命運がかかっている…と言うのは過言ですが。

…ともあれ、幸運を祈ります。

「ルトリア君来い、ルトリア君!来い!
カモン!イケメン!」

謎の呪文を唱えながら、最後の1個を開封。

出てきたのは、なんと念願のルトリアさんデザインのアクリルキーホルダー…。

…と、いう奇跡が起きることはなく。

「ぐあっ…!エルーシア君…!」

最後の1個は、エルーシアさんデザインのアクリルキーホルダーだった。

…以上。終了。

16回も引けるからって、油断しているとこうなります。

当たらないものは当たらない。

「駄目だ…。自分はもう駄目だ…。燃え尽きた…真っ黒にな…」

「…白じゃないんですか?」

まほろ部長は、白目を剝いて天を仰いでいた。

…迂闊に声をかけられる雰囲気ではありませんね。

「16回引いて、5種類のうち最推しは一つも出ず…。二番目の推しも一つだけ、ですか…」

「なかなか世知辛いな…。でも、案外そんなもんなのかもな…」

「もぐもぐ」

唱先輩と、李優先輩が呟き。

萌音先輩は、相変わらずポテトにマスタードをディップして食べていた。

凄いですね萌音先輩。もうポテト2つ目ですよ。

しかもLサイズ。

「辛い。辛過ぎる。自分はこの大量の在庫を抱えて、Twittersとかで『ルトリア君一発で出ました!』とか、『最推し来たよー!』とかいう当選報告を見せられて、盛大におりゅられる訳だろ?こちとらおりゃんのに!!」

…何だかまほろ部長が、訳分かんないこと言ってるんですけど。

大丈夫ですか?