「昨日はピザを作ったから…今度は別のイタリアンメニューを作りたいな」

「別のイタリアン…。パエリアとかどうよ?」

…パエリアはスペイン料理では?

「萌音は、李優のガトーショコラが食べたいな」

ガトーショコラはフランス料理では?

「俺はビーフストロガノフとか作ってみたいです」

ビーフストロガノフはロシア料理では?

駄目だ…。部員達が皆…思い思いに統一感のないメニューを口にしている…。

そして、「それはイタリアンじゃないだろ」とツッコむ人も…。

かと、思われたが。

「…お前ら、イタリアンの意味知ってるか?」

唯一佐乱先輩だけが、非常に冷静なツッコミを入れた。

「後輩君は?」

「えっ?」

突然話を振られてびっくりした。

こ、この流れで僕の意見を聞きますか?

…返答に困るけど…。

「えーっと…。イタリアンなら…ティラミスが好きです…」

「は?ティラミスってハワイ料理じゃねーの?」

「ハワイじゃないよ。確かイギリス料理…だったっけ?」

揃って首を傾げる、天方先輩と久留衣先輩。

「…イタリア料理ですよ…」

ティラミスはイタリアのデザートです。

さすがに僕は間違えませんよ。加那芽兄様に顔向け出来ませんからね。

「…お前ら、少しは後輩を見習ったらどうだ?無知にも程があるだろ」

「佐乱先輩は分かるんですね」

「一般常識の範疇だ」

その通りです。もっと言ってやってください。

「イタリア料理と言えば、ピザとかパスタとか…。ミネストローネとか、アクアパッツァ、カチャトーラとかが有名だな。小羽根、他にも知ってるか?」

「カプレーゼやブルスケッタ、リゾット、サルティンボッカ…。デザートでは、さっき僕が言ったティラミスや、ジェラート、パンナコッタが有名ですね」

「そうだ。お前ら、後輩を見習え」

「ほぇー。小羽根君凄いね。さるてぃんぼっかだって。強そう」

「雑学王の類ですか?」

…常識の範疇だと思います。

この人達、本当に料理研究部なのか…?

新入部員に料理の知識で負けてどうするんですか。

「じゃあ、さっき言った中でイタリアンフルコース作ろうぜ」

知識にも乏しいのに、いきなり作ってみようって…本気ですか?

「でも、レシピはどうするんですか?」

「あ?そんなんYaho●でググれば良いだろ」

インターネットは便利ですね。

でも、パソコンで調べる必要はありませんよ。

「僕の手持ちで良ければ…一応、イタリアンのレシピ本を持ってますけど…」

「えっ、マジ?」

僕は、鞄の中にしまっていたレシピ本を取り出した。

勉強用に持ってきたものだけど、まさかこんなところで役に立つとは。