すると。

「後輩君!」

「は、はい?」

まほろ部長が、真剣な表情で迫ってきた。

「後輩君は自分を見捨てないよな?一緒にバーガー食べてくれるよな…!?」

「そ、そんな怖い顔して迫られても…」

…はいともいいえとも言えないですよ。僕は『MKハンバーガー』、行ったことないんだから。

しかしまほろ部長は、僕のそんな曖昧な返答が気に入らなかったようで。

「なんだい君達は!ノリが悪いぞ!」

「ハンバーガーって、ノリで食べるものじゃないですからね」

ごもっともです、唱先輩。

「何でそんな冷たいことが言えるんだ。君達、これが自分の推しだったらどう思うよ!?」

はい?

「唱君!君はブラックなんたら言う香水ブランドが大好きだったよな!?」

「『Black Dark Perfume』ですよ」

「三度の飯より好きなんだよな!?」

「三度の飯どころか、九時間の睡眠より好きです」

それは新しい表現ですね。

「だったら、このキャンペーンの景品が、その香水ブランドのサンプルだったらどう思うよ!」

「…!それは非常に魅力的なキャンペーンですね」

『Black Dark Perfume』と聞いて、目の色が変わる唱先輩。

更に。

「それから、李優君!」

「な、何だよ?」

まほろ部長は、李優先輩に矛先を向けた。

「君だって、このキャンペーンの景品が…そう、萌音ちゃんの隠し撮りポストカードだったらどう思うよ!?」

「警察に訴える」

ですよね。

あくまで冷静な李優先輩だった。

隠し撮りは駄目ですよ。

「くっ…!それじゃあ…他に李優君の好きなもの…そうだ!例の劇団だったら!」

「何?」

『劇団スフィア』ですね。李優先輩が好きなもの。

「その劇団のコラボグッズが景品だったら?多少無理してでも、『MKハンバーガー』に通うよな!?全種類コンプしたいよな!?」

「それは…まぁ…そうかもしれないな…」

『劇団スフィア』の名前を出されると、さすがの李優先輩も迷っていた。

それから。

「萌音ちゃん!」

「なーに?」

「萌音ちゃんだって、このキャンペーンの景品が、李優君の隠し撮りポストカードだったらどう思うよ!?」

「欲しい」

萌音先輩は素直ですね。

その前に、隠し撮りされたことに対して警察に訴えましょうよ。

「だよな、だよな!?…それじゃあ最後に、後輩君!」

「は、はい?」

突然自分に矛先が向いて、びっくりした。

「君だって、キャンペーンの景品が…。…えーと…」

「…何ですか」

「…後輩君の好きなものって、何だっけ?」

「…本とか…紅茶とかですかね」

「何?その優雅な趣味」

悪かったですね。

加那芽兄様がそういうものを好きだから、それを見ていた僕も、自然と同じような好みになっただけです。

「じゃあその…キャンペーンの景品が、後輩君の書いたオリジナル小説だったら!」

「ぶはっ!」

「買い占めたいと思うよな!?」

…何でそうなるんですか。