持ち帰り専用タッチパネルか…。そんなのもあるんだ。

店内で食べる人と、持って帰って食べる人の差別化を図ってるんですね。

成程、感心感心…。

…って、挙動不審にきょろきょろしていたら、変な人だと思われますよね。

空いた席に座ると、李優先輩が、テーブルに備え付けられていたタッチパネルを手に取った。

おぉ。それを使うんですね。

「えぇっと…メニュー、とかは…?」

「タッチパネルで見られるぞ。ほら」

「…へぇ…」

ハイテクな機械ですね。これ。

改めて、メニューを確認。

牛丼チェーン店だから、メニューは牛丼しかないんだろうと思っていたけど。

そんなことはなかった。

まず、トッピングの種類が凄い。キムチ、チーズ、温泉卵に大根おろし、たっぷりのネギ。などなど。

牛丼だから、どんぶりには白米が盛られているものと思っていたが。

なんと、白米の代わりにたっぷりの野菜を盛った、野菜の牛丼なんてメニューもある。

ダイエットしたい方にも配慮したメニューですね。

しかも、牛丼だけじゃなくて、カレーのメニューも豊富。

それに、牛肉とご飯が別々のお皿に盛られた、牛皿定食なんていうメニューもある。

更に、お漬物やお味噌汁、生卵、サラダなどのサイドメニューも豊富。

今は夕方だからやってないけど、午前中限定の朝食メニューなんてのもあるんだって。

お手頃な値段で、この美味しそうな朝ご飯が食べられるそうだ。

納豆、焼きさば、卵かけご飯…だって。

無悪家のお屋敷で食べる朝食は、大抵パンと紅茶がメインの洋食だから。

和食の朝食って、何だか新鮮に見えますね。

…って、今夕方なんですけど。

「さて、小羽根。どれにする?」

「えぇと…李優先輩のおすすめは?」

「俺はいつも、このポン酢おろし牛丼のつゆだくだな」

つ、つゆだく?

「それは…ツウのメニューですか…?」

「牛丼のつゆを、いつもより少し多めに入れてもらうサービスのことだよ」

そんな粋なサービスがあるんですか。凄い。

「大根おろしの水分と、多めの牛丼のつゆが混ざって、これが何とも言えずハマるんだな」

「李優先輩…。たしなんでますね、牛丼を…」

「…そんな大袈裟な…」

そういう裏メニューをスッと頼める人って、何だか慣れてるって感じがして格好良い。

僕には無理ですよ。何せ、今日初めて来たばかりですからね。

「ちなみに、萌音はいつもネギ玉メガ盛り牛丼に、おしんこと納豆をつけてもりもり食ってるぞ」

「…萌音先輩も格好良いですね…」

めちゃくちゃワイルドじゃないですか。さすがドーナツ食べ放題をコンプリートした萌音先輩。

それで胃もたれを起こしていたら、格好悪いですけど…。

「ちなみに、初心者にはどのメニューがおすすめですか…?」

「しょ、初心者って…。まぁ、初めてならやっぱり、普通の牛丼の方が良いのかね…。特にこだわりなければ」

「そうですか…」

「カレーも結構美味しいけど。やっぱり、初めてなら牛丼食べたくないか?」

「はい」

牛丼のお店なんだから、折角なら牛丼を食べたいですね。

…よし。それじゃ。

「この、一番スタンダードな牛丼にします」

「そうか」

小粋なトッピングやサイドメニューはなし。

シンプルに、牛丼の味を楽しもうと思います。