さて、改めて。

今日から僕の部室となった、調理実習室をぐるりと見渡す。

…えぇっと。

「まほろ君、何やってるの?」

「え?宿題。先週出たやつ」

「まだやってなかったのかよ…。遅っ…」

「あぁ、そういえばそんな宿題ありましたね」

「お前も忘れてんのかよ…」

などと、親しそうに喋る先輩達。

…先輩達は全員、同じ学年なんだもんな…。そりゃ仲良しですよね…。

一方、一年坊主は僕一人だけで…。

…何だか、居心地が悪いと言うか…。

…気を遣いますよね。

あんまり、こう…勝手に話の輪に入っちゃ不味いと思って。 

椅子に座って、大人しくしておこうと思ったのだが…。

「良いよなぁ後輩君は。宿題、まだないだろ?」

「えっ」

突然天方先輩に話を振られて、思わずびくっとしてしまった。

「そういや、一年生は授業、今日からなんだっけ?」

と、佐乱先輩に聞かれた。

「は、はい…。午前中が健康診断で…。午後から授業が始まりました…」

「そうなんだ。じゃあ、まだ宿題はないね」

と、今度は久留衣先輩。

「そうですね…。でも、次の授業の予習をしてくるようにって…」

だから、実質その予習が宿題みたいなもので…。

…しかし。

「予習?しなくてもバレないですよ」

涼しい顔で、とんでもないことをさらっと口走る弦木先輩。

「い、いや…ば、バレるとかバレないじゃなくて…」

「真面目ですね、小羽根さん。適度に気を抜かないと、これからの高校生活、キツいことばっかりですよ」

先輩からの、有り難いアドバイスである。

…有り難いのか?これ…。

「おい、新入生に余計な入れ知恵してやるなよ」

「失礼ですね。俺は先輩として、新入生にアドバイスをしているだけですよ。聞きたいことがあったら何でも聞いてくださいね」

「ど、どうも…」

…それじゃあ、早速、さっきからずっと気になってることを質問しても良いだろうか。

「あの…じゃあ、早速聞いても良いですか?」

「何ですか?」

「おう。頼もしい先輩達に、何でも聞いてくれて良いぞ!」

「頼もしいって、自分で言うか…?」

佐乱先輩にツッコまれてますけど。

「この…料理研究部って、部員はこれだけなんですか?」

僕、昨日この部活動に入部してから、まだまだ知らないことがたくさんある。

今ここにいるメンバー…。天方先輩と、佐乱先輩と、弦木先輩と久留衣先輩と。

それから僕…合わせて5人が、調理実習室に集まっているけど。

他の部員はいるのだろうか。それを聞いておきたかった。