加那芽兄様は、ああ言ってたけど。

やっぱり、その後僕に話しかける者はいなかった。

大抵の人は、僕みたいな若造の存在に気づいてもいなかった。

中には、壁際で所在なくぷらぷらしている僕を、怪訝そうに一瞥する人もいたけど、話しかけてはこなかった。 

僕が無悪家の…その、外腹の子だと知っている一部のお客様は、露骨に軽蔑の眼差しを向けてくる人もいた。

お前、まだいたのか。とばかりに。

伊玖矢兄様が僕に向けるのと、同じ視線。

僕は、そんな視線に気づかない振りをした。

いつものことだ。

それに、僕が無悪家において、薄汚い立場であることは事実だから。悔しくても、何も言い返せない。

これはお務めみたいなもの。そう思って我慢するしかなかった。







そうして、ゆっくりゆっくりと、夜が更けていった。