そして、迎えたパーティー当日。

今日は朝早くから、屋敷の使用人達が忙しさに大わらわ。

何なら、キッチンで働いている人達は、今朝どころか昨日の夜からフル稼働である。

僕も、出来ればお手伝いする側に回りたかったな…。僕が手伝ったところで、逆に足手まといになりそうだけど…。

加那芽兄様も、今頃準備に大忙しなんだろうな。

僕も他人事ではない。そろそろ準備しないと…と、立ち上がりかけたその時。

「小羽根坊ちゃま。そろそろ準備のお時間ですよー」

と言って、使用人の志寿子さんが、僕の為に着替えを持ってきてくれた。

「あ、志寿子さん…。ありがとうございます」

「いえいえ。良かったら、お着替え手伝いましょうか?」

「…それはさすがに、自分でやります」

さすがに着替えくらいは、自分で出来ますよ。はい。

「そうですか…残念です」

何がですか?

「それじゃこれ、着替えてくださいね」

「はい。…あ、これ…」

志寿子さんが持ってきてくれた、この礼服。

見覚えがある。

「小羽根坊ちゃまもお気づきですね。これ、加那芽坊ちゃまが昔お召しになってたお洋服なんですよ」

ですよね。見たことありますもん。

僕がもっと小さい頃…パーティーに参加する時に、加那芽兄様が着てた服。

丁度、加那芽兄様が今の僕と同じくらいの歳だった頃に…。

「そんな…加那芽兄様のお洋服でしょう?僕が勝手に着る訳には…」

そりゃ、今の加那芽兄様には小さくなってしまって、もう着られる人がいないとはいえ。

自分のお古、勝手に使われたら嫌じゃないですか?

…と、思ったけれど。

「いえいえ。そのお洋服は加那芽坊ちゃまが、小羽根坊ちゃまに着せてあげて欲しいと仰られたんですよ」

「え。加那芽兄様が…?」

「はい。…小羽根坊ちゃまにはちょっと大きいので、少しサイズを直しましたけど」

オブラートに包んでくれてありがとうございます。「このチビ」ってはっきり言ってくれて良いですよ。

今も昔も、僕より背が高くて羨ましい加那芽兄様である。

「お古ですけど、でもまだまだ綺麗ですよ」

「ありがとうございます…。それじゃ、ご好意に甘えて…」

お洋服、お借りしますね。加那芽兄様。

早速着替えて、鏡を覗いてみたのだけど。

加那芽兄様ほど似合ってなくて、何だか気恥ずかしかった。