…とはいえ。

この一週間、キモ可愛いペット達の動画が、僕の気分を逸らしてくれたのは確かである。

週末に迫った憂鬱なパーティーのことや、相変わらず愛想のまったくない伊玖矢兄様のことを考えずに済んだから。

しかし、僕の憂鬱な気分とは関係なく。

週末のパーティーの準備は、着々と進んでいた。

…一体何のパーティーか、って?

それは、無悪家当主の誕生日パーティーである。

つまり、加那芽兄様と伊玖矢兄様のお母様…僕にとっては継母に当たる方の誕生日だ。

彼女は現在、無悪家の当主代行を務めている。

その為、恒例の無悪家の当主誕生日パーティーは、継母である無悪玲衣子様の誕生日に開かれる。

これがまた、非常に盛大なパーティーなのである。

僕は奥様に嫌われているし、継母ではあるけれど、彼女は僕のことを息子としてカウントしていない。

無悪の名を名乗ることすら、おこがましいと思っているのだろう。

それは分かっているけれど、僕も無悪家の端くれとして、パーティーに不参加という訳にはいかなかった。

そこで、毎年パーティーに参加しては、パーティー会場の壁に同化している。

加那芽兄様は、いつもそんな僕に気を遣ってくれている。

でも、加那芽兄様は自他共に認める、無悪家の次期当主。

無悪家長男として、パーティーの来客対応に忙しく、僕を構っている暇などないのだ。

だからこそ、僕は毎年、パーティー会場の隅っこで縮こまっているという訳だ。

正直、パーティーには参加したくないんだけど…仕方ないですよね。

僕以上に、加那芽兄様は大変なんだし…。

それを思えば、壁と同化してボーッと突っ立っていれば良いだけの僕は、楽なものですよ。

これもお務めだと思って、いつものごとく頑張ろう…。