ーーーーーーそして、それから時は流れ、今に至る。



「…うーん…。やっぱり…」

僕はその日、学校の自分の席で、本を開いていた。

これも、屋敷の書庫から持ってきたものだ。

加那芽兄様の書庫は、さながら本当の図書館のようである。

ノンフィクション小説から、ミステリー小説から、レシピ本や、果てはハーレクイン小説まで、何でもある。

本意ではないとはいえ、料理研究部に入部したので。

少しは料理について研究しようと、手っ取り早く屋敷の書庫を訪れ。

書庫にあるレシピ本を、手当り次第に借りてきた。

「興味がある本があれば、何でも買ってこの書庫に置いておくと良い」と加那芽兄様に言われているので。

他にも、いくつもレシピ本を見繕って、本棚に置かせてもらった。

今読んでいるレシピ本も、そのうちの一冊である。

イタリアン・レシピの本である。

…ほら、ピザ、作ってたじゃないですか。

まぁ…ゲテモノピザだったんですが…。

あれは絶対、ピザじゃない。

僕はピザのレシピなんて見たことがないけど、あれは絶対に作り方を間違えていると思う。

じゃあ、本当のピザの作り方って、どんな感じなんだろう?

そう思って、書庫からレシピ本を借りてきた次第である。

我が家の書庫は優秀である。

ちゃんと、ピザの作り方が載っているレシピ本を見つけた。

そのレシピを…確認してみたところ。

…やっぱり、あのゲテモノピザは、作り方を間違えていると思う。

レシピ本を見て初めて知ったんですが、ピザの作り方って、結構複雑なんですね。

小麦粉に水と塩を入れて練ったら出来るのでは?と勝手に思っていたけど。

そんなことはなかった。強力粉にイースト菌を混ぜて、適切な温度のぬるま湯。入れて捏ねて…。

オーブンで焼く時も、適切な温度で、適切な時間で焼き上げて…。

これ、結構上級者向けのメニューなのでは?

料理素人の僕には、とても出来そうにない…。

成程。それが分かっただけでも、大きな収穫。

チャレンジ精神は大事だけど、それ以上に大切なのは、身の丈に合ったチャレンジを心掛けることだって、前に加那芽兄様が言っていた。

僕もその通りだと思う。