何とも煮え切らない気分のまま一夜が明け、翌日。

僕は、よっぽどか伊玖矢兄様に謝罪に行こうかと思ったのだが。

僕が謝ったところで、余計火に油を注ぐような気がして。

結局、諦めた。

けれど、朝食の席で一緒になった加那芽兄様曰く。

「え…。外出されてるんですか?」

「うん…。朝早くから出掛けたそうだよ」

伊玖矢兄様は、さっさと外出されてしまっていた。

そんな…まるで逃げるかのように…。

「どちらに…?」

「さぁ…。夜までには帰るとだけ言って、行き先は告げなかったそうだよ」

「そうなんですか…」

…何処行っちゃったんだろう。

多分…聞いても答えてくれないんだろうな…。昨日のこともあるし…。

「ふぅ…。まったく困った子だね。来週のパーティーが思いやられるよ…」

加那芽兄様は、溜め息混じりにそう言った。

…そうだ、来週のパーティー。それを忘れちゃいけない。

伊玖矢兄様も、そのパーティーに参加する為に、わざわざ留学先から一時帰国されたんだから。

パーティーと言えば、凄く楽しそうな響きのように聞こえるけど。

僕にとっては…一年の中で一番憂鬱な、非常に気が滅入るイベントなのである。これが。