ようやく、部活動が終わって。

僕はぐったりとしながら、無悪家のお屋敷に帰宅した。

あぁ…怖かった。

ヘビが怖い、なんて情けなくて言えませんけど。

でも、怖いものは怖い。

何なら、道路の白線までかヘビに見えて、内心「びくっ」としてしまった。

これは重症ですよ。

夕飯、スパゲティだったらどうしよう…。

スパゲティに限らず、麺類だったら危うい…。

何なら、糸こんにゃくも危険。

ヘビだけでこんな調子…。来週、タランチュラの動画なんか観たら…僕はどうなってしまうんだろう…。

などと、憂鬱な気分になっていたが。

僕にはこれから、来週のタランチュラ動画よりずっと、憂鬱な出来事が待っているのである。

…それは、僕が落ち込みながら屋敷の廊下を歩いていた時。





「…そこで何をしてる?」

「えっ?」

背後から突然声をかけられて、僕はびくっ、として固まった。

振り向くと、そこには20歳くらいの若い青年が立っていた。

「…!あ、あなたは…」

「…お前、まだここに居たのか」

心底、穢らわしいものでも見るように。
 
僕に、嘲りの視線を向けてきた。

それでも僕は、急いで頭を垂れた。そうしなければいけない相手だからだ。

だって…その人は、加那芽兄様と同じく、無悪家の血を継ぐ者。

…僕にとって、もう一人の兄に当たる人物だから。