ぐったりとして、帰宅後。

凄まじい長さになった感想メモを、加那芽兄様に渡すと。

それはそれは喜んでくれた。凄く参考になる、って。

唱先輩の忌憚なき意見が、より良い商品開発に繋がってくれれば何よりです。

…それで。

「加那芽兄様…。一応、聞いてみるんですけど…」

「ん?何?」

「その香水…作ってるブランドって、えーと…『Black Dark Perfume』っていうブランドなんですか?」

そう尋ねると、加那芽兄様はびっくりしていた。

「そうだけど…。小羽根、よく知ってるね」

えっ、凄い。やっぱり合ってたんだ。

「あの香水ブランドは、私が懇意にしているマフィアの幹部が…」

「え、マフィア?」

「あぁごめん。とある大企業の重役が、個人で経営してる香水ブランドなんだよ」

そ、そうなんですか…。

…それは、詳しく聞かない方が良いかもしれませんね。

「かなり独特な香りの香水ばかりなんだけど…。好きな人には堪らない香りらしいね」

「そうですか…」

唱先輩も、そんな感じのこと言ってたな…。好みが分かれる、って。

「小羽根、興味あるの?良かったら、あげようか?」

「え?」

いや、興味があるのは僕じゃなくて。

唱先輩が、なんですけど…。

「新商品を発売する度に、商品サンプルが送られてきてね…。いくつか、使わずにそのままストックしてあるんだ。小羽根が欲しかったらあげるよ」

「え…。でも、それ…加那芽兄様が使うんじゃ?」

「いや、私は正直、あの香りは嫌いではないんだけど、自分でつけるには気が引けてね。もらっただけで、つけたことはないんだ」

物凄く独特な、特徴的な香りですもんね。

あの香りを身に纏う加那芽兄様…。

今、ちょっと想像してみたけど…。何だか想像がつかない。

加那芽兄様には、このまま爽やかな香水だけを使って欲しいです。

「このままタンスの肥やしにしても、勿体ないしね。小羽根にあげるよ」

「ありがとうございます、加那芽兄様…。試してみます」

果たして、僕にはあの香りが似合うだろうか…?