翌日。

僕は早速、5つの香水瓶を持って部活に行った。

「あの、先輩方。ちょっとお願いがあるんですけど」

「おぉっ!?」

まほろ部長が、びっくりしてこちら向いた。

こっちもびっくりした。

…そんなに驚きます?

「どうした。もう健康追求部はやめよう、なんて言い出すんじゃないだろうな?」

「い、いや…そうじゃありませんけど」

…やめようって、言いたいのは山々ですけどね。

「ぶっちゃけ、自分ももうやめたい」

やめたいんじゃないですか。

「…じゃ、やめたらどうですか?」

「今やめたら、三日坊主だって言われるじゃん」

それは嫌なんですね。

筋トレ、プロテイン、健康チェックと、一応三日は過ぎてるので、三日坊主ではないですよ。

「そうじゃなくて…健康追求部とは特に関係ないんですけど、加那芽兄様、いや、えぇと…兄から頼まれたことがあって…」

かくかくしかじか。

僕は、昨日加那芽兄様から受けた説明を、先輩方に話した。

「…と、いう訳なんですけど…。お願いしても良いですか?」

「勿論!!えぇ、勿論!!」

まずいの一番に、まほろ部長が反応した。

僕の両手をガッチリと掴んで。

な、何ですか。

「『frontier』のコラボ商品のモニター調査なんて…!やりたくても出来ないぞ!?」

「は、はぁ…」

「ありがとう!めっちゃ嬉しい!後輩君大好き!」

興奮したまほろ部長に、思いっきりハグされた。

そ、そんな大袈裟な…。

「頼むのは構わないけどさ…」

李優先輩が、片手を上げて尋ねた。

「俺達、素人だぞ?香水のことも『frontier』のことも、よく知らないし…。萌音なんて、」

「よーし。萌音頑張るぞー。…李優、モニター調査って何?」

「ほら、この通りのアホだし」

え、えぇと…。それは、その…。

「気にしないでください…。素人だって言うなら、僕も素人ですし。忌憚のない意見を聞きたいそうなので」

「そうか…。じゃ、俺達で良ければ協力させてくれ」

「はい。えっと…唱先輩も良いですか?」

「えぇ、構いませんよ」

宜しくお願いします。

嗅覚に優れた唱先輩に協力してもらえたら、とても参考になる意見が得られそうだ。

僕は、アルファベットのラベルが貼られた香水瓶を取り出した。

「めっちゃわくわくするな〜!どんな匂いなんだろうな?」

「さぁ…。俺は『frontier』のことをよく知りませんから、彼らをイメージした香水と言われても、その香りがイメージに合っているのか否かの判断が出来な、」

などと、唱先輩が流暢に喋っていたのは。

僕が、一つ目の香水瓶の蓋を開けるまでだった。